昔の箱根駅伝を振り返る企画の続きです。
第75回箱根駅伝1999の続き、最終10区になります。
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1区 2区 3区 4区 5区
6区 7区 8区 9区
この年から10区が23㎞と長くなったのですよね。
9区でトップに立った順大は、2年宮崎選手に9年ぶり総合優勝への襷を託します。初優勝目前でまさかの2位転落となった駒澤大は2年増永選手がどうか。
シード権争いは9位早大が浮上も、10位日体大5秒差、11位拓大42秒差、12位東洋が1分02秒差、一斉スタートの影響で状況が分かりにくいな中でのアンカー決戦へ。当時は9位まで、最後獲得したのは…
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宮崎展仁(順大2年)①
増永洋平(駒大2年)②1:33
平野泰輔(神大4年)③5:11
宇野彰男(中大3年)④6:29
大熊賢司(東海4年)⑤9:00
大崎悟史(山学4年)⑥12:57[6]11:55
丹沢太郎(大東3年)⑦16:01[7]14:09
杉山祐太(拓大1年)⑪18:50[8]14:22
柏原誠司(東洋3年)⑫19:10[9]14:49
小平佳伸(日体3年)⑩18:13[10]16:11
成瀬貴彦(日大2年)⑧16:50[11]16:50
増田創至(早大4年)⑨18:08[12]18:08
芳養孝之(帝京4年)⑭27:04[13]19:22
渡辺俊介(法大3年)⑬24:00[14]20:00
尾山智康(中学3年)⑮28:36[15]20:00
10区の距離が延長された今回、例年以上に2年生以上の選手の起用も増えた印象です。順大はロード期待の2年宮崎選手が逃げにかかります。
シード権争いはスタミナ型の早大増田選手を、日体小平・拓大杉山、東洋柏原選手が追いかける展開。なお、東洋は、現東洋大監督の酒井俊幸主将を当日変更。これがドラマを生みます。
順大宮崎、山学大﨑選手ら実力者が飛ばしていく
トップを走っていくのは順大2年宮崎選手。1年の頃からロードで非常に期待が高く、前回は往路の4区を担っています。澤木監督からは、将来の2区候補とまで言わしています。その後一時期足踏み時期があったものの、アンカーでまさかの重責を担う展開でタスキを受けた。
足取りとしてはしっかりとしていて、4㎞通過は12分14秒で、1㎞3分少しのペースをキープ。蒲田の踏切でただ一人18分を切るペースで走っていく。
駒大増永選手は最初を3分15秒とゆったりしたペース、5㎞通過も15分49秒。5-6㎞は3分01秒とアナウンスがあったが、蒲田で差は2分以上と開いた。
定点2番目は山学大﨑選手は前回区間賞の選手。総合6位スタートもさすがの力を見せています。定点3番目は7位を走る大東丹沢選手。丹沢選手も前回アンカー。経験者が飛ばしていく展開だ。
シード権争い、拓大杉山選手が飛ばして、日体小平選手が非常にスロー
総合9位を走る早大増田選手は12番目。総合では直後にいるはずの大学はみんな前にいる。その中で、8番目を走る拓大1年杉山選手が定点間4番目と突っ込んだ入り。総合10位に浮上し、早大との差は31秒となった。
逆に10番目を走る日体小平選手が非常にスローな入り。唯一19分台で鎌田を通過している。”今年一番伸びた選手”としてアンカーを任されたが、5秒だった早大とは36秒となり、総合も11位へ。果たしてここからペースを上げられるかというところだ。
順大宮崎選手独走!9年ぶり優勝はほぼ決定的、復路優勝も…
宮崎選手は非常に堅実。腕を内に振る独特フォームだが、一定のリズムを刻み続けている。9㎞通過も27分18秒。1㎞3分少しのペースを刻み続け、独走体制を築き始めた。
2位駒大増永選手は1㎞3分10秒程のペース。10㎞通過は31分16秒追い上げモードには切り替えることがどうもできず。八ツ山橋ではすでに2分56秒の大差に。ほぼ順天堂大の9年ぶりの優勝が決定したといっていいだろう。
そして、復路優勝もどうも順大に決まりそうになっていた。9区終了時では6区区間新などで盛り返していた神奈川大が、1分程順大をリードしていていましたが、それも逆転した感じだ。過去、復路優勝6度、”復路の順大”は健在だった。
最初で最後の箱根路の神大平野選手も懸命にペースを上げようとはしているものの、個人タイムで2分近い差が既についており、やや厳しいか。4位中大宇野選手も追い上げており、総合3位キープもまだ予断を許さない状況だった。
早大増田選手ペース上がり切らず、東洋柏原選手が猛追!
シード権争いが静かに急を告げていた。8番目を走る拓大杉山選手がやや息切れをしたところ、9番目の柏原選手が一気に追い上げてきた。この定点間はなんと3番目のタイム、見た目で5秒差に迫ってきた。
完全に単独走の早大増田選手がペースを上げきれず、この定点間失速。13㎞通過42分13秒は本調子ではない。9位早大、10位に進出した東洋が13秒差、11位拓大が15秒差、12位日体大が34秒差…東洋は一気に1分近く詰めたようですが、どれほど早く情報が各チーム入っていたか?関係者非常に緊張感が走っていたはずだ。
東洋柏原選手が3人抜き9位浮上!…12位までまだ43秒差
一気に来た。東洋柏原選手は連続定点間3位で一気に追い上げてきた。拓大杉山選手もつかせず交わしていった。そして約4分後、早大増田選手が田町定点を通過。一気に順位が確定していくが…
ついに東洋大が総合9位に浮上!前回はアンカーが猛追するも僅か23秒届かなかったシード権。今回も往路で出遅れたが、ゴールまで残り6㎞余りでついに逆転した。
10位早大とは5秒差、11位拓大は18秒差、12位日体大は43秒差で、まだまだどうなるかは分からないとはいえ、走りの勢いは東洋柏原選手だ。このまま突き抜けることができるかどうか注目だ。
中学尾山選手が定点間上位キープ!総合最下位から脱出!
その後ろで、もう一人の選手が好走をしている選手がいた。中学大尾山選手がここまで区間里の走りで好走を見せていた。繰り上げで一緒に走り出した法大渡辺選手は1.5㎞地点で突き放していたが、八ツ山橋の前では帝京芳養選手も捉えた。
そしてこの田町の定点では、どうやら総合でも帝京大を交わして総合14位に浮上。多くの駅伝ファンに予想された最下位脱出!そして13位法大とも1分少しの差に。法大が完全に失速気味なので、もう一つ上の順位もありえそうか。これは中学大として嬉しい収穫になりそうだ。
山学大﨑選手が、5番目の東海大熊選手を眼前に捉える
山学大大﨑選手がずっと堅実なペースを刻み続ける。暑さと向かい風の影響もあり、昨年ほどのタイムではないものの、区間2位のペースを保持。この追い上げが、見た目約3分ほど前にいたはずの東海大熊選手が僅か眼前2秒差となった。
とはいえ、一斉スタートの影響があるので、総合ではまだ1分後ろではある。ただ、距離が伸びた3㎞。大熊選手も苦しい走りが続いていることを思うと、ここで一気に総合5位へ浮上…ありえそうな話。最後の最後まで順位を上げる戦いは続く。
残り3㎞、9位東洋と10位早大との差が39秒差に!ほぼ決着
シード権争いの方はどうやら決着がついたようだ。東洋柏原選手は、この定点間も3番目の速さをキープ。視線の先に、大東丹沢選手が見えてきたのも非常に良かったはずだ。丹沢選手も結構区間上位で走っている事を考えると、柏原選手の頑張りは見事。
早大増田選手はこの定点間でもあがってこず、12番目のタイム。総合9位東洋とは39秒差がついてしまった。また10位拓大、11位日体大もペースを上げられず。日体大小平選手は、ちょうどいいタイミングで追いついてきた日大成瀬選手にも付けず、苦しい走り。どうやら東洋大の復活シード権の可能性が濃厚になって来た。
順大宮崎選手、全定点間トップ!初代区間記録保持者に!
トップを行く順大宮崎選手は最後まで堅実だった。3分05秒前後のペースを最後までキープ。最終的に全定点間トップの走りを続け、ダントツの区間賞!初代区間記録保持者に。
勿論、チームとしても10年ぶり9回目の総合優勝の歓喜に沸いた。その前は62回~65回の4連覇だった。ただ、その後は途中棄権や2度の総合9位に沈んだ年もあり、順大はそのまま戻ってこないのでは…と思われたこともあったが、そうではなかった。
今回は優勝候補にはあがっていなかったが、12月に入ってから澤木監督は「学生の強さを感じた」とのこと。3強崩しは密かに自信はあったそうだが、それでもパーフェクトの駅伝でまさかの想いもあったそうだ。
区間記録も出て、下級生の優勝経験者もかなりの人数が出て、ここから数年はまた優勝争いに、強い順大が見られそうだ。
ミスはなかったが…、乗り切れなかった駒大悔しい連続2位
駒大が2年連続の2位で大手町に戻ってくる。しかし、光景が違う。前回は過去最高位の2位で喜びあふれていたが、今年は悔し涙の2位だ。優勝候補筆頭にあげられ、実際レースを支配したものの、復路9区でスルリと逃げて行った。
4区区間記録でトップに立ち勢いのまま往路優勝したものの、他区間では他校を離し切れず、流れができなかったか。往路終了時、森本監督が「神大・山学も選手層が厚い、順大も気になる」とは言っていたものの…。
果たしてアンカー増永選手はどんな気持ちだったか。最後の1㎞は3分26秒もかかり、精神的にも応えていたかもしれない。大八木コーチら中心に、足りなかったものを追い求める次の1年間になりそうだ。
3連覇ならず神大3位、予選トップ通過の東海大が5位逃げ切り!
トップがゴールしてから約9分後、神大平野・中大宇野選手が相次いでやってきた。3連覇を目指していた神大は2区と5区のブレーキに泣く結果に。復路は意地を見せていたが、アンカー区間で惜しくも復路優勝を逃す結果に。
連覇の難しさを、大後監督は「学生スポーツには”不自然”」と表現。実際は2連覇は20回以上あるものの、3連覇以上になると僅か4校(当時)と激減。不自然さへの挑戦は、今度は順大の番となった。
4位は非常に安定した戦いぶりだった中央大。思えば2年連続4位。この頃は72回大会の優勝を除いて、本当に3位か4位で安定していた中大。伝統校流石だが突き抜けきれないもどかしさも。宇野選手が最後神大を視界にとらえたが惜しくも届かず。史上最多優勝回数更新は次回以降に持ち越しとなった。
後ろ見た目の5番争いが激しかった。20㎞地点で東海大熊選手に追いついた山学大﨑選手が先にゴールするかと思われたが、大熊選手が猛然とダッシュ!ラスト3㎞は3番目に早いタイムで走り切り、見た目も総合も5位!予選トップ通過から見事な戦いだった。
山学大は大﨑選手が2年連続区間2位にまとめる走りをみせたものの、追い上げ届かず総合6位。こちらも2区と5区のブレーキに泣いた形だ。72回棄権を除いて66回大会から続いた総合4位以内の記録も途絶えた。
ショックも大きく、インタビューは避け、足早にゴール地点からさった山学大。期すところはあったはずですが、チーム成績はここから安定感を失っていく…。
大東・日大・東洋大までシード権!早大・拓大・日体大は予選会へ
ここからは見た目と実際の順位が異なるシード権争いと言うことになってくる。まずやってきたのが大東丹沢選手と東洋柏原選手の争い。経験者として安定した大東丹沢選手はしっかり総合7位をキープした。
東洋柏原選手は総合12位からシード権最後の枠の9位に浮上したとのテレビ放送。歯を食いしばって懸命のペースアップが印象的。最後はやや息切れ感だが、大東大に食らいついた。早大を待つ形となったが、果たして…。
続いて単独走となった拓大1年杉山選手。序盤シード権を追いかけたが、長丁場23㎞はきつかった。総合3位以内候補にもあげられたが、4区大ブレーキがここまで響いてしまった。駅伝の恐ろしさだ。
続いて、日大・日体大の伝統校の2校。日大はどうやらシード権を守った模様。一時流れを失い危なかったが、9区と10区成瀬選手が区間一桁で踏ん張った。日体大は逆に9区と10区が乗り切れずに、8区終了時の9位の位置を守り切れず…今年もシード権復帰とならなかった。
さて、あとは早大増田選手を待つところ。いつの間にか繰り上げスタートの中学大尾山選手が追いついてきて、残り1㎞手前で前に出られてしまう。
シード権へのカウントダウンもテレビ表記されたが、残り1㎞で2分30秒では間に合わない。終始ポーカーフェイスだった増田選手だが、状況は伝わっていたか。ゴール直前で顔を歪めながらゴールした。
結果、シード権に40秒届かなかった。増田選手はラストの定点間は7番。自らスタミナ型と評し、ラストで意地を見せたが、エンジンがかかるのが遅かったか。
シード権久々獲得の東洋大は喜び、泣いている選手もいた。それを「来年3位を目指すんだから」と叱咤するコーチ陣のシーンも。早大は比較的淡々としていたようにみえたが、ショックも大きくインタビューは「ごめんなさい 来年です」で切り上げた。
中学大尾山選手が最終定点間トップタイ!常連校前に爪痕!
さて、驚いたのが、ゴール直前で見た目で早大を抜き去った中学大尾山選手だ。ずっと区間上位をキープしていたとはいえ、最後でここまであげてきたのは驚きました。最終的に区間3位はこの地点で中学大最高成績。
果たして、ラスト定点間計算してさらに驚いた。なんと順大宮崎選手に並んでトップタイ!早大が見えてから力を振り絞れたとは思いますが、見事な走りだった。
総合でもいつの間にか13位に。最下位筆頭候補だったが覆してみせた。この時、中央学院大は4年ぶり3度目の出場。次の出場は4年後…まだ常連校になる前のチームが、ここで爪痕を残していた。
そのあと14番目に、2年連続2度目の出場、まだ常連校になる前の帝京大が入ってきた。とはいえ予選2位通過でどこまで常連校を食えるかという中、悔しい総合最下位でのゴールとなった。
とはいえ、アンカー芳養選手が、前回はできなかった一本でまとめた襷を持って帰ることができたのは収穫。当時の喜多監督は福岡大出身の方、「選手も監督も箱根の経験が少ない、毎回勉強」の実況が印象的。この帝京大が爆発するのは、結構早くに訪れる。
最後のランナーとしてやってきたのは法大渡辺選手。3分20秒オーバーのペースで非常に苦しい走りとなったが何とか辿り着いた。渡辺選手自身は、中学校の卒業式で「絶対に箱根駅伝に出る」と言い切ったそうですが、個人として夢は達成しました。
チームとしては厳しい総合14位。往路はエース選手が”パッと花を咲かせた”が、復路は選手層の薄さが露呈した格好だ。とはいえ、次年度以降しばらくの間大きく話題を提供し続けることになる法大。どこのチームも見逃せない。学生スポーツ、とりわけ箱根駅伝は面白いと思うところです。