箱根駅伝2020が終わって時間がたちましたね。
今年も、区間ごとの定点間分析を行っていきます。
まさかの世界レベルの走り、4年生の意地のバトルや下級生の区間記録争いなど見応え十分だった3区になります
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3区走者・走順
鈴木塁人(青学4年)①
井川龍人(早大1年)②0:01
西川雄一朗(東海4年)③0:02
青木祐人(國學4年)④0:03
遠藤大地(帝京2年)⑤0:27
原富慶季(創価3年)⑥0:37
吉川洋次(東洋3年)⑦0:38
イエゴン ビンセント(東国1年)⑧0:46
亀田優太朗(日体3年)⑨1:12
戸口豪琉(中学3年)⑩1:13
赤﨑 暁(拓大4年)⑪1:24
手嶋杏丞(明大2年)⑫1:27
田澤 廉(駒大1年)⑬1:51
樋口翔太(日大1年)⑭2:51
猿橋拓己(筑波3年)⑮3:36
長谷川潤(国士2年)⑯3:37
橋本龍一(順大4年)⑰3:38
三浦拓朗(中大2年)⑱3:54
菅原伊織(城西3年)(19)5:25
越川堅太(神大4年)⑲5:26
岡原仁志(法大4年)⑳5:54
トップ集団の4選手は、早大井川選手を除いて、全員4年生。青学鈴木・東海西川・國學院青木選手とスピードに自信のある選手が続く。西川・青木選手、さらに後ろの帝京遠藤選手はあたりは昨年も区間上位好走している選手だ。
また7位東洋吉川選手は故障明けながら主力選手、東国大は龍久我以西のビンセント選手をここに起用、トップと46秒差はどうか。さらに後ろ、ハーフ61分台拓大赤崎選手、ルーキー駒大田澤選手は1分51秒差だった。
5km13分48秒の青学鈴木選手に追い付いてくる選手
ほとんど4チームが固まっていたのですが、青学鈴木選手が突っ込んで入っていったのですよね。1㎞2分48秒はともかく、5㎞が13分48秒はびっくり。ここで区間記録を25秒も上回った。
今年度はずっと苦しい走りが続いていた鈴木選手。11月下旬学連記録会1万28分台を出して復調傾向だったものの、爆発的なスピードを見せてくる。
これについていったのは早大井川選手だけで、過去3区経験のある國學青木、東海西川選手は後方で自分のペースで推移。それでも5㎞14分少しでは進んでいるはずだ。
ついていった早大井川選手も4.4㎞で後退、青学鈴木選手が単独トップに立つ。井川選手は離れてからはぐっと後退、7.1㎞地点で國學院青木選手に交わされ、それぞれ17秒と20秒差だった。
これだけ突っ込んだ鈴木選手でも藤沢定点で区間3位。区間2位なのが27秒差でスタートした帝京遠藤選手。ずっと後方に見える位置にいたが、藤沢定点で1秒詰めて26秒差。6㎞過ぎに実力者東海西川選手を捉え既に総合4位タイだ。
この後ろが凄い。46秒差の8位スタートの東国大ヴィンセント選手が、2.2㎞で東洋吉川・創価原富選手を次々ととらえると、そのまま前を追い、33秒差まで詰めてきた。5㎞13分48秒でトップが入っても13秒詰めてきたのは今思うと脅威だった。
なお、抜かれた東洋吉川・創価原富選手は、ぐっと先頭から離れて1分33秒差となっていた。
藤沢定点ではまだ区間8位だった駒大田澤選手
最初から大きく注目を集めていた駒大田澤選手だったが、実は藤沢定点では、僅差とはいえ区間7位だった。
実は最初の1㎞は、多少上っているとはいえ、3分00秒と慎重な入り。大八木監督からは「遅すぎる、区間記録を狙うぞ」と喝が入ったくらい。
ここからペースを上げて、5.5㎞で39秒離れていた日体大亀田選手を捉えて驚いたが、実は亀田選手が区間最下位ペースと乗れていなかった。
さらに区間中位で推移する拓大赤崎・明大手嶋・中学戸口選手に5秒差に迫ったところで藤沢定点だった。田澤選手が真価を発揮するのは、このあたりから、だった。
中大三浦選手が区間6位で突っ込んで入る
後方は、流れもあって全体的には区間下位での入りとなっていますが、その中で突っ込んで入ったのが中大三浦選手。3区から攻めていくという中大の作戦、スピードランナーの三浦選手がこの時点で区間6位。
18位スタートでしたが、筑波大猿橋選手、国士大長谷川選手を立て続けに交わし、これも実力者の順大橋本選手と並走する形だ。
橋本選手は、3年連続の3区。教育実習生からもらった赤い鉢巻をつけてしっかりと走っている。2人で、前日大樋口選手を懸命に追いかけているところだ。
参考:森田(青学)41分01秒
東国ビンセント選手に食らいつこうとした青学鈴木選手
10㎞の給水で、山登り候補も怪我でエントリー漏れした、竹石選手から給水を得て力をもらった鈴木選手。沿道の声援にも時折手を上げて応える余裕があったが、東国大ヴィンセント選手が追ってきた。
9㎞地点では、既に帝京遠藤・東海西川選手を交わして3位に浮上、10㎞手前までには國學・青木選手を交わして、青学鈴木選手と10秒差。11㎞地点でついに2秒差となった。
そして、駅伝ファン印象に残るシーンだ。11.25㎞地点、青学鈴木選手が笑顔で振り返り手招きをしたシーンだ。解説者は「実力差があるので前に行かせたのでは」という見解だったが、どうも違うようだった。
鈴木選手本人談によると、ペースメーカーになってほしいということでの手招きだったらしい。実際、交わされた直後、真剣な顔に戻り、懸命に食らいつくところだった。
だが、11.5㎞過ぎに首をかしげながらニヤリと笑うと徐々に後退。自分のペースに戻していった。どうもヴィンセント選手は、前に行ってくれと勘違いして、ギアチェンジしていった模様。意図が伝わらなかったと苦笑いの鈴木選手。
13.2㎞地点ではまだ東国大と青学大の差は10秒差だったが、茅ヶ崎14.3㎞地点では21秒となりじりじりと差が広がり始めた。区間記録については触れていないが、この地点で1分31秒も早い驚異的なペースだった。
日本人トップ帝京遠藤選手、定点間日本人トップ駒大田澤選手
ビンセント選手だけでなく、上位を走っている選手は全員区間記録を超えるペースで推移。この定点間では多くのランナーは19分40秒台で駆け抜けているが、全体での区間2位は帝京遠藤選手だ。
出雲駅伝では思うようなレースができず、全日本駅伝ではメンバーから外れてしまった。中野監督からの言葉かけで状態が上向いたそうだが、前回区間3位からさらにペースアップだ。ちょうと東海西川選手を振り切ったところで茅ヶ崎点だった。
なお、唯一ついていけなかったのが早大ルーキー井川選手。國學青木選手、東国ヴィンセント選手に抜かれ、9㎞過ぎに追い付かれた遠藤・西川選手にも10㎞過ぎで離れていた。ここから4㎞程で45秒も離れてしまった。
青学鈴木選手についていき、5㎞14分切るペースで通過したが、どうもオーバーペースだったか。完全に単独走にもなり、苦しいレース、早大としても勿体ない展開となった。
その後ろはスーパールーキーが加速していた。駒大田澤選手が、8.6㎞で拓大赤崎・明大手嶋・中学戸口選手に追い付くと、9.3㎞で一気に突き放す。明らかなスパートだった。
驚いたのが、中継所で1分13秒離れていた東洋吉川・創価原富選手に、13.2㎞で追いつくとあっという間に引き離した。この定点間は日本人トップのタイム、青学鈴木選手らよりも20秒以上早いタイム、これは本当にスーパールーキーの走りとなっていた。まだまだ前を追っていきそうだ。
日大樋口・順大橋本・連合城西菅原選手が定点間健闘
後ろの方でも健闘者が出ている。日大ルーキー樋口選手がしっかりペースを保っていて、この定点間7番目。苦しむ日体亀田選手を捉えて13位に浮上。この前1分以上まだ離れているが、いいフォームで追っている。
その後ろ15位争いに決着で、順大橋本選手が中大三浦選手を突き放した。このあたりはさすが3年連続3回目の橋本選手。しっかり安定したペースで刻む。
また、直前の記録会で28分31秒の大幅ベストを出していた連合城西菅原選手も本領を発揮。8番目相当のタイムで推移、3区経験者の神大越川・法大岡原選手らを引き離し、筑波猿橋選手を眼前に捉えた所だった。うまくいけば、最下位争いより前に挙がれそうな雰囲気だった。
参考:95回森田(青学)11分06秒(52分07秒)
ストライド220~190㎝、ピッチ180~170歩前後
これがなんの数値かというと、東国大ヴィンセント選手の走法だ。おおざっぱにいうと、1歩で2m進み、それを1秒間で3回近く、1秒で6mも進んでいる計算で、これはどんどん後ろが離れていくはずだ。
この数値、箱根駅伝2020往路完全版、CM中と思われる所で出ていた数値。本放送ではなく、まだ試験中のものと思われるが、いずれ導入されるだろうか。しっかり解析すると凄さが分かる。
ヴィンセント選手の走りについて、「鋼のような肉体をしていて、手足が長い、腕の振りが大きく、前に早く足が出る、ケニア人選手によくある特徴」との評だったが、本当に世界レベルの走りとなってきた。2位争いはいつの間にか300m離れていた。
國學院青木選手と明大手嶋選手が定点間2位
その2位争いが熾烈となってきていた。疲れが見え始めた青学鈴木選手に、國學青木選手が猛烈なチャージ。この4㎞弱で12秒詰め寄り、僅か3秒差に。
前田監督も「東海大は突き放した、青学とは詰まっている」と檄を飛ばす。往路優勝をもくろむ國學院大。青学大との差は、かなり意識のあるという事か。
もう一人、定点間2位の走りをした選手がいて、明大手嶋選手が快走。並走していた拓大赤崎選手を一気に突き放す。のちに万全ではなかったと判明したが、赤崎選手を捉えたのは驚きだった。
それから東洋吉川選手、その前に出た創価原富選手をもとらえて、8位に浮上。手嶋選手自身も全日本駅伝のリベンジとなっている。そして…テレビ放送ではもう少し後だったが、東洋大がなんと10位に後退してしまった。
参考:95回森田(青学)9分19秒(61分26秒)
追い風ながら世界レベルの走りとなったヴィンセント選手
日差しは出てきたものの、ヴィンセント選手の軽快でなおかつ力強い走りは崩れない。区間賞は確実、3区での1年生区間賞は82回東海大佐藤選手、留学生区間賞は88回山学大コスマス選手以来となる。
そして、いよいよ大変なことに気付き始めてきた。61分26秒の前年の区間記録をはるかに上回る59分台が出る可能性があるのではないかと言う話になってきた。
解説者は「時計が壊れている」「…60分前半ですかね」と中継直前で語っていたが、いやはやとんでもなかった。最後まで伸びやかな走りで59分25秒、区間記録を2分以上話回るとてつもない記録となった。
この記録はハーフマラソン換算で世界歴代5位相当の記録。直線でおそらく追い風が吹き続けているので、追い風参考ではあるものの、新年の正月から早々、世界レベルの走りを間近で見ることができたということだ。
ヴィンセント選手本人は「楽しかった、別の区間も走りたい」と言っていたことは何より。なんだか大学の域を完全に突破してしまった選手ですが、これからが注目の選手です。
4年生対決を制した青学鈴木選手・帝京遠藤選手が日本人新記録!
さて大きく盛り上がったのが2位争い、18.8㎞で青学鈴木選手に國學院青木選手が追いついて激しいバトルを繰り広げる。ともに4年生、総合・往路優勝争い候補に挙げられているチームの中心核の選手として負けられない戦いだ。
最後に制したのは青学鈴木選手。ここは挑戦者となった青学大の意地もあっただろうか。中継所までに5秒引き離してリレーだ。とはいえ、國學院大も目標の往路優勝に向けて、ほぼ完璧な流れだ。この争いは注目だ。
その後ろは、2年生帝京遠藤選手がすぐにやってきた。前回のルーキー時の区間3位もびっくりしたが、それよりも遥かに上回る走り。彼も区間記録を更新し、日本人トップの区間2位。位置関係もあり、大きく取り上げられていないが、見事な継走だ。チーム的にも、久々に序盤からいい流れ、ダークホースが本領発揮だ。
そこから30秒以上遅れて、東海西川選手がやってきた。青学大とはこの区間で50秒以上離された。62分21秒でしっかり前半のスピード区間のつなぎの役割を果たし続けていたものの、最終結果を考えるとおそらく悔やんだ走りだったかも。。。最もまだまだ優勝争いの最中でもあった。
駒大田澤選手は7人抜き区間3位!早大、東洋、日体大らが順位ダウン…
この後ろ、早大井川選手はジリジリと後退。湘南大橋上で駒大田澤選手が鮮やかに抜き去って行った。これで7人抜き、やはり本物の大物だ。田澤選手の健脚は最後まで衰えず、61分25秒は区間記録を上回って区間3位。前哨戦に続き、再度駒大に流れを寄せた。
続いてきたのは、これまた終盤に伸びやかな走りをした明大手嶋選手。箱根予選で見せた走りを、本戦でも見ることができた。続いて、2位から8位まで落ちた早大井川選手が創価大原富選手に追いつかれたところ何とか踏みとどまってリレー。同級生田澤選手に「まだ抜いたと思っていない」と言われたそうだが、来年果たして…。創価大は新戦力が大健闘だ。
その後ろだ。10位で東洋吉川選手の姿があった。『鉄紺の襷に異変』と実況されたが、2年連続往路優勝のチームが本当に苦しんでいた。吉川選手自身も故障が続き、「自信がなかった」と攻められず、高速化した中で前年より1分タイムがかかってしまった。トップと4分差はともかく、青学大らとも2分40秒差は果たして…。
11位拓大赤崎選手も意外と伸びなかった。調子を合わせられなかったそうだが、2本柱を使ったところ、流れを作っていけるかどうか。12位は故障者の影響で急遽3区に回った戸口選手が順位を落としながらもなんとか粘った形だ。
13位は日大ルーキー樋口選手が順位アップ。スピードは素質高い選手、3区で気候も良くて存分に潜在能力が活きたでしょうか。日大としても鬼門の3区を乗り切ったのは良かった。14位順大橋本選手も2つ順位を上げてきた。全日本のように上位で戦えていないが、ここからあげていけるか。
15位はびっくり。2区序盤で先頭争いだった日体大が落ちてしまった。初出場となった亀田選手が最後までペースを上げられなかった。前年伸び盛りの中、箱根駅伝の5日前に疲労骨折。今回はチャンスを手にしたが、持っているものを出せなかった。縦に長い展開で、すでに10位とは3分もの差になったがどうなるか。後ろ中大三浦選手は終盤息切れ、16位までにとどまった。
17位は筑波猿橋選手がやってきた。順位は落としたが、茅ヶ崎からは12番目付近のタイムで走行し粘り切った。その後ろは学生連合の実力者、城西菅原選手。流れが良くない中、区間11位相当は頑張っただろう。まだ前が見える位置に絡んでいる。
後ろは、18位国士大長谷川選手が倒れ込みながらやってきた。将来の主力選手の期待がある選手ですが、今回はスタミナが持たなかったでしょうか。ラスト3㎞で区間中位の選手に1分引き離される勿体ないレースに。
19位神大越川20位法大岡原選手はともに実力者でしたが、64分台で中々前を追い上げることはかなわず。トップとの差も10分前後の苦戦。実力者はこの後の区間に控えるものの、中々苦しい流れとなった。
速いだろうと思われた東国大ビンセント選手が予想以上の速さでトップを奪取。出場4度目で初の区間賞&トップ中継となった。優勝争いの観点では、青学・國學院が完璧、帝京大もダークホースぶりを発揮、東海と駒大はやや後方もまだまだ挽回できる位置。大砲を使った東洋大が厳しい位置となった。それぞれの展開の中、山に向けて重要な4区に突入していく。