箱根駅伝2020が終わって時間がたちましたね。
今年も、区間ごとの定点間分析を行っていきます。
ラスト、10区になります。青学大はビクトリーロード、東海大黄金世代最終走。そしてまだまだ大いに盛り上がった3位争い、7位争い、シード権争い、そして最後の最後にまた区間記録が誕生します!
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青学大は当日変更で2年生湯原選手を投入。出雲・全日本が1区だったので意外だったが、スピードのある選手、万が一のラスト争いをも想定してのオーダーだった。東海大は、昨年優勝のゴールテープを切った郡司選手で、最後まとめにかかる。
3位争いは、東国大内山選手・明大河村選手ともに4年生。シード権争いは2年連続アンカーの中学石綿選手がしっかりまとめられるかどうか。
この他にも3年連続アンカー日体中川選手、神大の主力荻野選手、復活を期す4年生中大二井・順大野田選手、学生連合は2年連続の東大生ランナーとなる阿部選手など上級生の注目ランナーが多かった。
参考:83回松瀬(順大)17分27秒
青学湯原・東海郡司選手、ともに区間記録ペース!
青学湯原選手は5㎞通過が14分35秒。六郷橋のあるところは1㎞3分04秒かかったが、そのほかは2分52秒ほどでクリア。このあたりで区間記録を10秒上回っていたが、蒲田定点では13秒となっている。
東海郡司選手も同じくらいのペースを走行。昨年、優勝のゴールテープを切って、父より「凄いのはお前じゃない チームメイトが差を広げてくれたから」と言われ、もう一つ今年走力を上げてきた。
郡司選手も蒲田定点で区間記録を上回るペース。ここまで14秒早い。1秒青学に詰めているが、トップとの差は3分41秒。3分22秒以内に押し戻さないと、復路優勝も青学に取られる。負けられない戦いとなっている。
11位走行、創価大嶋津選手が定点間トップで猛烈な追い上げ
定点通過でびっくりしたのが、11位走行の創価嶋津選手。1位2位の選手よりもさらに早い17分07秒でさらに突っ込んでレースを進めていく。
榎木監督は、ラスト勝負を見据えて「抑えていけ」と指示をしたそうだが、全く無視していることになる。
中継所で55秒あった中学石綿選手との差は既に18秒差にまで詰まっている。この勢いなら追いつくのは時間の問題、追いついてから両者どのように対応するのか、ということいが非常に気になった。
繰り上げスタート、日体中川選手が突っ込んで入っていく
この他、まだ差がないが、下位の選手でも突っ込んでいる選手が多い。繰り上げスタートをした3チームの中、日体中川選手もその一人で、7番目のタイムで通過している。
比較的珍しい3年連続アンカーを担当。今年は往路の予定だったが、直前で調子を落とし、慣れている区間に回った。ただ、これでオーダーが大きく変わったこともあり、チームは流れに乗れず。
先ほどの繰り上げスタートでは、姿が見えたチームメイトを、スタートの合図が鳴るまで、大声で名前を呼び続けていた。何とか自分のできることを、と懸命に前を追い上げようとする走りだ。
参考:83回松瀬(順大)22分22秒(39分49秒)
創価嶋津選手が連続定点間トップ!中学石綿選手を一蹴
にわかに大注目となったシード権争い、テレビ中継が創価嶋津選手を捉えたのは9.8㎞地点だったが…「創価大が10位に上がっています」の中々の衝撃的なフレーズだった。中学大石綿選手は既に交わしていて、もう200m後方だという。映像からも姿を中々確認できなかった。
最も、飛ばした代償自体は受けていて、8㎞地点で脚がピリッとしていたらしい。新八ッ山橋定点では脚を叩く仕草もあった。それでも走りは変わらない。解説者も「半分は過ぎてるので、大丈夫でしょう」とのこと。創価大が初シード権に向けて邁進する。
苦しくなったのは、5年連続シード権、しかも直近2年連続10位の中学大。石綿選手は昨年もアンカーを担当、「苦しくて15㎞以降記憶がない」とのことだが、昨年は10位でゴールした。だが、今年は苦しい。創価に抜かれたあたりから急速に失速、定点で既に1分04秒差。6年連続シード権が一気に遠のいていく。
4年生神大荻野・中大二井選手が定点間上位、順大野田選手らも
その後ろが飛ばしていた。12位は拓大清水選手が走り出していたが、連合を除いて連続で定点最下位の非常に苦しい走り。見た目で14番目に後退していた。
代わりに浮上したのが神大荻野・中大二井選手両4年生の争いだ。荻野選手は3障で有名な選手だが、駅伝での安定感もピカ一の選手。11月記録会で絶好調で1区予定だったが、脚を痛め、2週間の調整で何とか合わせてきたが、ここまで区間5位の走り。
中大二井選手は、1年時に1万m28分台をマーク、エース候補と言われたが、長期間不調に苦しんだ。4年生の秋になって久々に上がってきて、最初で最後の箱根路のチャンスをつかみ取った。シード権は苦しいが、一矢報いる走りができそうだ。
その後ろ、15番目の順大野田選手も中々の4年間だった。1年時に往路3区を任され、将来を期待されたが、3年生になったあたりから、試合に中々うまく調整できなくなってしまった。複数人同期が外れた中、久々にやってきた出番。ここまでは区間中位で走っている、このまま確実に襷を運びたい。
参考:83回松瀬(順大)9分20秒(49分08秒)
國學院殿地選手が3位争いへ、帝京吉野選手が初定点間トップ!
優勝もシード権争いも決まりつつある中、面白くなってきたのが3位争いだ。スタート直後、東国内山選手に明大河村選手が追いつき並走していたが、その後ろ2チームがどんどん詰めてきていた。
國學院殿地選手が区間上位の走りをキープ。13.9㎞地点で中継所であった1分05秒差を完済。この定点間では3番目の走りをしていた。目標の3位に向けて、國學院大が舞い戻ってきた。
殿地選手も、前回箱根で8区を走り、次期主力候補と期待されながらも、貧血に苦しんだ。12月下旬にようやく状態が上向いたのが、この走りだ。諦めずに前を追っていく。
そしてその後ろ、帝京吉野選手が定点間トップだ。3位争いに既に7秒差に接近していた。最初は練習生から、1年目から箱根出走候補だった。そこから万年補欠だったが、中野監督「秘密兵器です。期待していてください」。ここまで区間2位の走り、帝京大も獲得したことのない3位以内へ向けてラストスパートをかける。
早大宍倉・駒大石川選手のが7位争いへ浮上、東洋及川選手苦しく
ここからほぼ3分離れた7位争いも盛り上がってきていた。早大宍倉・駒大石川選手とともに箱根初出場の選手が競り合いながらしっかり走っている。東洋ルーキー及川選手を交わして7位タイに浮上。9区横浜駅前から続いている両校の争いはまだ決着が付きそうにない。
東洋及川選手はこの定点間最下位の苦しい走り、元々6区山下りの補欠だったが、他の区間にけが人が出て、玉突きで急遽10区出走。序盤の入りは区間中位だったが、ここにきて一気に苦しくなってしまった。総合9位に再び順位を下げてしまった。
参考:83回松瀬(順大)5分02秒(54分10秒)
帝京吉野・創価嶋津選手同タイム!吉野選手は3位争いへ
区間1位と区間2位争っている帝京吉野選手が同タイムで定点間トップ!吉野選手はついに、3位争いにへ。鶴見中継所であった1分44秒差を完済したことになる。過去最高4位の帝京大も3位の目が出てきた。
次々に追いつかれた東国内山選手は、若干の動揺はあったらしい。昨年に続けて2年連続出走。その時を参考にして作った設定タイムと同様のタイムを刻んでいたそうだが、今年は本当に高速化。基準を変えなければならないことだろう。シード権を獲得したことのない東国大だが、ここまできて3位は手放せない。
明大河村選手も同様だろう。明大は91回大会4位に入って以来、上位どころからシード権から遠ざかっていた。中距離から距離を伸ばして箱根を掴んだ河村選手。うまく足を残せていれば、強豪校復活へ3位ゴールも可能なはず。3校による4位争いの決着が気になった。
国士孝田選手が定点間7位好走!
後方では、後半になって定点間順位がぐんぐん伸びてきている選手がいる。先ほど8年ぶり繰り上げ回避となった国士大のアンカー、孝田選手だ。箱根予選は走っておらず、上尾ハーフで64分半ばの成績があるランナーだが、うまくあがってきている。
最初は区間19位、前を走る法大増田選手から引き離されたが、この定点間は7位に浮上。じわじわと追い上げ、6秒差に。復路に入って、本当にうまく駅伝ができている。毎年何かしら強くなっているチームだ。
参考:83回松瀬(順大)6分17秒(60分27秒)
東海郡司選手がペースキープ!復路優勝圏内へ
青学湯原VS東海郡司選手の1位2位の対決。ずっと3分40秒付近で一進一退の攻防だったが、ここにきて青学湯原選手が失速。定点間3番付近をずっとキープし続けていた郡司選手がぐっと差を詰めた。そして復路優勝の3分22秒以内に差を詰めてきた。
黄金世代の中で決して目立った存在ではなかった下級生の頃。両角監督から「お前を使わなくてよかった」と辛らつな言葉も受けたそうだが、「褒めてくれることがうれしかった」という。
蒲田定点を過ぎたあたりから、非常に険しい表情を浮かべていたが、どうやら足底を痛めたらしい。そんな中、黄金世代のプライドを最後の最後見せつけるように、青学大を追走していく。
創価嶋津選手9位へ浮上!区間記録を58秒上回る!?
創価嶋津選手は区間賞&区間新&チームのシード権がかかっているが、さらに前へ突き進んでいく。いつのまにか東洋及川選手を交わして9位へ。過去最高12位、チーム一丸で”セル越え”を目指していたが、3つ上のポジション、9位になった。どんな心境だろうか。
個人タイムは、この地点でなんと13年前の区間記録を58秒も上回っているそうな??最も、83回当時の全体の記録を見ると、馬場先門の位置が微妙に違う気もするが…。(馬場先門以降のタイムが、83回大会は全員物凄く早い)それでも、不滅と言われている記録、ここも破られそうだ。
中大二井選手が定点間2位粘走!
ここにきてさらなる好走を見せているのが12番目を走っている中大二井選手。元主力候補が最後の最後に快走を見せている。この定点間はなんと2番目だった。並走していた神大荻野選手はスタミナが間に合わなかったが失速気味、そして総合でも拓大を交わして12位に浮上。
他、同学年で最後の箱根を目指していた舟津・田母神選手らが入れなかったはずだとも思った。二井選手の好走は、中大ファンならず駅伝ファン嬉しいところ。最後の最後まで前を追っていく。
参考:83回松瀬(順大)8分32秒(68分59秒)
最後は笑顔で走れるペースで!青学湯原選手がゴールテープへ
青学湯原選手が大手町に帰ってきた。10㎞手前から、首が振れて口が開いていたのが気になったが、これは平常運転だった。最後はやや息切れした印象だったが、残り3㎞原監督「最後は青学らしく笑顔でゴールしよう」との激、笑顔で帰って来れるペースだったか。
最後はタスキをしっかりと「青山学院大」と表に向ける余裕も見せて2年ぶり5回目の総合優勝へ。しかも10時間45分台の大幅総合新記録だ。原監督は4年生の現状を嘆いて「2年計画で再生する」と話していた。これに奮起した4年生。一度を負けを知った青学大は強くなって戻ってきた。
そこから、3分02秒まで最後追い上げた東海大郡司選手がゴール。残り1㎞で両角監督は「ヨーイドン」の言い回し、「区間新・区間賞・復路優勝も懸かっている。悔いのない走りをしなさい」の指示、持っている余力を出し尽くして黄金世代最後の走りだった。
最終的に、区間賞も区間新も惜しくも逃したが復路優勝は獲得。全日本制覇は3年生の活躍も大きく4年生はやや押されていた。迎えた最後の箱根、青学大の異次元の走りで総合は逃すも、復路優勝獲得は、黄金世代の意地を見た気がする。総合10時間48分台のタイムも立派だった。
白熱した3位争い!國學殿地選手ら、定点間も3位争い!東国大は初シード
大いに盛り上がったのが、國學院・帝京大・東京国際大・明治大による3位争い!國學院大3位なら1年前から立てた目標達成&過去最高位、帝京大も過去最高4位を上回り過去最高位、東京国際大は過去最高15位からジャンプアップ&初シード権、明治大は5年ぶりシード権&3位なら8年ぶりだ。
とりわけ元気だったのが、國學院大殿地選手。4人の集団で唯一の2年生(あと3人は4年生)。残り1㎞やや手前からロングスパート。スプリントよりは得意ということでの判断だったが、これが的中。一気に縦長になり、抜け出すことに成功。
前回が当時過去最高位となる総合7位、そしてその日のうちに目標3位を立てて、実現するというのは中々できないことだと思います。國學院大は2年生の粘りで3位達成。9区終了時で一瞬3位を諦めた前田監督が男泣きした瞬間だ。
直後に、4位区間新ながら区間2位だった帝京吉野選手、5位は2年連続10区内山主将が初シード権でのフィニッシュとなった。面白いのがこの定点間でも殿地・吉野・内山選手で3位4位5位と、順位通りの争いだったこと。こういう発見があるから、この定点間での分析がやめられない。
早大宍倉・駒大石川選手の8位争いが定点間トップ争い!
6位は明大河村選手が、20秒遅れて6位フィニッシュ。1500mでも有名な選手なので、ラスト争いどうかな?と思っていましたが、最後まで脚が残っていなかったか。それでも、長距離対応間もない所、久々のシード権重圧が掛かる中、見事に役割を果たしたと言える。
さて、ここからあたりが、今回の箱根駅伝に置いて、瞬間最大視聴率を獲得していたところ。9区横浜駅から続いていた早大と駒大のバトルだ。残り700mあたりで早大3年宍倉選手がスパート。駒大2年石川選手が5m差で食いつく展開に。
一時勝負がつきかけたが、残り100m付近動きがやや鈍った宍倉選手を、石川選手がじりじり追い詰める。が、一つ学年が上の宍倉選手が辛くも逃げ切りシード権確保、総合7位で2年ぶりシード権復活だ。
破れた駒大石川選手の、ゴール後の悔しそうな姿もなかなか印象的。出雲・全日本と違って波に乗れず苦しい戦いだった。駒大の王座奪還の戦いはまだまだ続いていく。なお、この早大宍倉・駒大石川選手のラストの争い、定点間1位2位を記録している。
創価嶋津選手、区間記録で初シード権!東洋大はシード権死守
そして、この直後まで迫っていた創価嶋津選手。「やるじゃん創価、やるじゃん嶋津」という実況もありましたが、まさか11位から9位まで浮上して、まさかの区間新記録!1区と10区と2区間が区間賞だったのも忘れてはならない。記録づくめの初シード権獲得だ。
そのあととなってしまった東洋及川選手は、後半苦しい走り、3つ順位を落としたものの、辛くもシード権は確保。連続総合3位以内の記録は途絶えてしまったものの、優勝候補の一角として、本当に最低限のラインは確保した。
そして、その2分後、6年ぶりに予選会へ陥落となった中央学院大がやってきた。今や箱根出場校で指導歴最多35年となった川崎監督は「今の学生は予選会の怖さだけ知らない、だからシード権は絶対ほしい」とのこと。
一部主力が欠けて流れが作れない中、9区まで10位で留まっていたが、近年苦手とする10区で失速。石綿選手自身は、昨年のタイムとあまり変わらないが、昨年は区間9位、今年は18位。ここもまた高速化を象徴するシーンだ。
拓大清水、法大増田選手がラスト3㎞ペースアップ
ここからは見た目と総合がごっちゃになってくるところだが、見た目12番目総合12位に浮上した中大二井選手が戻って来た。最終学年に見事な好走、”激動の4年間”を過ごした世代最終学年唯一の出走、区間6位でまとめきった。
1分離れて、最後に13番目に浮上した拓大清水選手と14番目に落ちた神大荻野選手。清水選手は、序盤から苦しい走りで最終的に区間最下位だったものの、ラスト定点は9番目で何とか切り替えて見せた。総合13位は下馬評溶離は良かったか。
荻野選手は、2週間急仕上げの中、積極的な走りを見せたものの、最後まで持たなかったか。今年も神大は選手のやりくりにやや苦労し、流れに乗り損ねた格好だ。
1分空いて、15番目はちょっとびっくり、法大増田選手が浮上していた。区間15位付近だったが、ラストの定点は6番目とペースアップ。これが功を奏し、ゴール直前で神大を交わして総合15位へ。前年シード権の意地、増田選手本人も、昨年当日変更の悔しさ、一つ晴らせたところだ。
日大金子・筑波児玉選手も終盤激しい競り合いに
この後ろ16番目に後退したのが順大野田選手。中盤まで区間中位だったが、ラスト3㎞は最下位、全体で区間17位で、好調時の走りとはならなかった。総合は14位をキープした。
秒差で、中盤の定点で健闘していた国士大孝田選手。添田監督体制で初めて繰り上げ回避、卒業生が大量にいた中で、一つ前進したのは良かったところだ。
続いて日体中川選手。3年連続のアンカー、過去3年間で一番低い位置で走ったのは非常に悔しいし、万全で走れなかったのも悔しかったと感じる。タイム上競っていた日大を引き離したところ、総合順位を17位にあげたのがせめてもの救いか。
その後ろ日大金子選手と筑波児玉選手の争いが白熱していた。金子選手が突き放すが、児玉選手が食らいつく展開だ。2年連続アンカーで1500mのスピードがある日大が最終的に僅かに先んじる形に。
日大としては、選手層が薄い中、主力を欠いてしまった。さらに貯金をもくろんだ往路が高速化につけなかった。また一つ強化を考えなければならないところだ。
そして20番目筑波大は、総合最下位とはいえ、下馬評よりも引き離されなかった。区間最下位もいくつかあったが、終盤の粘りもあり、戦えた区間もあった。次年度予選を突破できる保証はないが、伸びしろは大きく残っているチームだろう。
最後に、見た目14番目から21番目まで順位を落としてしまった連合の東大阿部選手。心身面、何かしら合わせられなかった所があったのだろう。それでも総合で19位相当で前年より戦えたことは良かった。
青学大が強くなって戻ってきたこと、2番目以降の戦力図はどんどん変わっていきそうな予感を漂わせて、第96回箱根駅伝2020は終わりを迎えた。