箱根駅伝2020が終わって時間がたちましたね。
今年も、区間ごとの定点間分析を行っていきます。
続いて、8区になります。逃げる青学は昨年4区で失速した岩見選手の調子が上向きと投入。2分差で追う東海大は、区間記録保持者で前回MVPの小松選手で勝負をかける。がっぷり四つとなった結果は…
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岩見(青学)①
小松(東海)②2:01
河東(國學)③3:24
櫛田(明大)④4:42
芳賀(東国)⑤6:04
加藤(駒大)⑥6:57
前田(東洋)⑦7:24
鳥飼(帝京)⑧8:27
太田(早大)⑨9:36
藤井(中学)⑩9:40
鈴木(創価)⑪10:17
佐々木(拓大)⑫11:06
安田(神大)⑯14:50[13]11:55
若山(日大)⑮13:48[14]12:11
矢野(中大)⑬12:58[15]12:34
西沢(順大)⑭13:25[16]12:49
清水(国士)⑲20:12[17]12:51
中園(法大)⑰15:07[18]13:23
嶋野(日体)⑱16:52[19]13:33
吉井(大東)(18.5)17:13[20]13:35
伊藤(筑波)⑳21:44[21]15:07
全体的に好調の青山学院大、多くの候補者がいる中、前日の往路4区途中に決めたという岩見選手が出走。前回4区で辛酸をなめた選手だ。今期は故障に苦しんだが、直前で調子を上げて最後の枠を勝ち取った。
後ろは注目東海小松選手。昨年は、この8区で区間新記録&トップに躍り出て、MVPを勝ち取った選手。単独走とはなるものの、8区驚異のスピードを持っているのは間違いない、どこまで追い上げるか。優勝争い、大きなポイントになると思われていた。
参考:95回小松(東海)20分02秒
記録保持者東海小松選手突っ込むも、青学岩見選手上回る
まずは2位東海小松選手のペースが気になった。タイトルホルダーでもあり、ストライド走法から繰り出すスピードは魅力的な選手だ。
5㎞通過は14分27秒。並走状態で1㎞3分ペースを刻んでいた昨年よりはここまでぐんと早いペース。両角監督が「自分との戦いだぞ」の檄に応える走り。なお、日差しはあるが、体感温度は昨年ほどではないという。ここも記録が出るだろうか。
対して、トップ青学岩見選手はそれよりも上回るペース。5㎞14分19秒で、この時点で区間記録より24秒早いとのこと、小松選手よりもここで8秒早い。茅ヶ崎定点6.7㎞で、中継所より9秒広がって2分10秒差となっていた。
これは意外。小松選手の方がスピードに分があるとみていたが、岩見選手も完全復活か。見ればブレーキした昨年よりずっと絞れた身体つきになっていた。このあたり、東海大がどう呼応するか気になるところだ。
話題になった明大櫛田選手の超スローペース
8区序盤、巷で話題になっていたことがある。4位で走り出した明大櫛田選手が、最初の定点のタイムが非常にスローだったこと。
緊張していて最初の1㎞が3分13秒。5㎞通過は分からないが、茅ヶ崎定点での岩見・小松選手の差からすると、15分半ばくらいだったのではないか。なんだか一昔前の8区のスタートだ。
高速化している今年では、ここまで区間19位。今年安定して良かったルーキーのスローペースには、明大ファン結構肝を冷やしたとかなんとか。
駅伝での失速は、ここ数年ずっと繰り返していただけに、一気にシード権争いに落ちてしまうのでは…そんな予感までしてしまった方もいたかもしれません。
帝京鳥飼、早大太田選手が定点間3番4番
そして、その櫛田選手の後ろのチームは全体的に早めのペース。前回7区6位の東国芳賀選手に、駒大のスピードランナー加藤選手、東洋大期待のルーキー前田選手が区間一桁。
その後ろがさらに早く、8位帝京鳥飼選手に9位早大太田選手が定点間3番と4番。共に2年連続の起用で、この1年で実力を付けてきていて、自信を持っての起用だ。
早大太田選手は、中継所で4秒後ろだった10位中学藤井選手を一気に置き去り。さすが1万m28分台で走っているランナーだ。このうしろ、11位創価大の実力者鈴木選手が37秒差から31秒差に縮めてリレー。ここもまた動きがありそうだ。
法大中園選手ら下位選手が突っ込む!
一斉スタート組は比較的おとなしめの中、突っ込んで入っていく選手が下位の方にいた。18番~20番付近で出走のチームだ。
法大のルーキー中園選手が、この時点で区間8位との差で前を追い上げにかかる。7区でできた流れを活かしたい。後ろは連合の大東吉井選手が区間10位相当で入り、日体嶋野選手を巻き込んでいく。
基本的に、疲れが出てくる15㎞過ぎに遊行寺の急な上り坂があるので、ツッコミは厳禁と言われるが、追い上げるにはやはり速めに入る必要もある。このあたり、各定点間注目すると面白いところでもあります。追い上げなるか。
参考:95回小松(東海)26分27秒<46分26秒>
レースが動かない!青学岩見&東海小松選手がほぼ同ペース
高い緊張感の中、青学岩見&東海小松選手の、2分隔てたがっぷり四つのレースとなっていた。タイム推移をみているとほぼ1㎞3分00秒のペースを維持し続けている。
小松選手は、最初青学大との差が広がったと聞き、予定のペースより早めたというのを後に述懐していますが、遊行寺の坂の前でどのくらい脚を使っただろうか。
15㎞通過で青学岩見選手が44分25秒、東海小松選手が44分30秒で総合タイムは5秒差となった。東海小松選手は、前回6区山下りで優勝メンバーとなった中島選手から給水、総合連覇へ僅かなチャンスを繋ぎに行く。
完全単独走になっている3位國學河東選手も悪くなく、区間一桁をキープ。種子島初の箱根ランナーとしての紹介、地元も大いに盛り上がっていたことだろう。
ペース上がらない中学藤井、創価鈴木選手が追いつき10位並走
中位あたりはやはり全体的に早い。東国芳賀選手の健闘が光っていて、中継所で1分22秒差あった明大櫛田選手を、12㎞地点で27秒差まで接近。とはいえ櫛田選手も自分の走りを取り戻しつつある中、果たしてどうなるか。
シード権争いがぐっと両者の距離が近づいてきた。中学藤井選手が本来の走りができない。故障明けのエース選手と争った中獲得した、最初で最後の箱根路だが、この定点間17位と落ち込んだ。
視界に入る範囲にいた創価鈴木選手が逃すはずがない。10㎞地点で12秒差と急接近すると、13.2㎞地点で追いついた。鈴木選手はこの区間は地元中の地元、昨年は連合チームとして逆の3区を走っている。そのあたりも力になるか。初シード権へ、シード権の番人中学大に食ってかかる。
順大ルーキー西澤選手が中間走力走!定点間4番のタイム
一斉スタート組では、順大西澤選手がこの定点間素晴らしい走り。16番目でタスキを受けると、すぐ後ろから追いついた国士大清水選手と並走。茅ヶ崎定点後に決着をつけると、
日大ルーキー若山選手と、昨年区間一桁で走っている中大矢野選手といった実力者を交わして、14番目に浮上。前、これまた前回経験者の神大安田選手がかすかに見える位置に。流れの中ながら、順大が復路健闘しています。
参考:95回小松(東海)8分25秒<54分54秒>
東海小松選手定点間トップも…ペース落ち表情険しく
8区の難所遊行寺の上り坂、小松選手が連続して定点トップを取り続けているが、まだトップとの差は2分02秒。1㎞で1秒ずつしか詰められないのはもどかしいだろう。
表情の差で言うと、青学岩見選手の方が活き活き。東海小松選手は昨年はほとんど見せなかった苦悶の表情を遊行寺の坂からずっと続けている。
ペースで言うと、区間記録を出した昨年の8分25秒に対して、8分47秒かかっていて、22秒も落としている(それでも定点間トップなのですが…)のは、やはり昨年は一定ペースの並走でかなり脚が残っていたということだろうか。
10区までに1分差まで追い上げれば、逆転優勝がありえると両角監督が話していた中、昨年MVPの小松選手の追い上げは非常に重要だが、簡単にはいかない。意地の力走となっている。
帝京鳥飼選手が定点間2位快走!実力校東洋駒大を捉える
面白くなってきたのは6位争い。序盤は駒大加藤、東洋前田、帝京鳥飼選手ともに早いペースで入ったのだが、終盤になるところ勢いをキープしているのは、帝京鳥飼選手だ。
遊行寺坂で完全に視界に捉えると、18.3㎞ちょうど影取の定点で東洋前田、駒大加藤選手を捉えて一気に6位に浮上。この定点間は2位となる力走!この両校を捉えることができたのは爽快ではなかったか。
駒大加藤選手が、これについていけず苦しそう。実際定点間15番目。ちょっとびっくりしたが、9区に置けなかった時点で何かしらの不安要素を抱えていたかもしれない。後ろ大きく離れているが、9位早大太田選手も5番付近のタイムをキープ、残り3㎞何とか踏ん張りたい。
シード争いが白熱!創価鈴木・中学藤井選手が定点間一桁
観ている方は面白くなってきたのがシード権争い。並走していた中学藤井・創価鈴木選手だが、15㎞地点川崎監督「目を覚ませ!」の檄に、藤井選手がスパート!一時30m差まで引き離した模様。
ただ、創価鈴木選手も実力者。じわじわとい追い上げていき、影取定点の18.3㎞付近で再度追いつき、前に出る展開。両者ともこの定点間8番目。一番苦しい地点、激しい争いに。実況も「なぜシード権争いは毎年、こうも盛り上がるのでしょうか」との通りの展開だ。
どちらが9区までに前に出るか、非常に気になる争いだ。
参考:95回小松(東海)8分55秒<63分49秒>
東海小松選手が区間賞も、詰めた差は1秒!青学強し!
最終的に青学岩見選手は最後までしっかりした足取りで戸塚中継所までやってきた。前年4区15位で5連覇を逃した一因になり、今季は複数回の故障に苦しんだ。
その中で、直前で調子を上げてきて、原監督「昨年よりケツが絞れている」とのことで、昨年の4区途中に、8区出走が決まった。今年は、連覇を狙う東海大の追随を許さない走りだった。
最後の3㎞は、小松選手が何とか3秒上回り、その差は2分。中継所からは1秒詰めた計算、そして意地の区間賞獲得だった。それでも昨年8分55秒に対して、今年は9分13秒。いかに昨年が凄まじかったかということだ。
区間賞は獲得しながらも、青学大のとの差は2分とほぼ変わらず。悔し涙のインタビューは、大きく印象に残っている方も多いだろう。厳しくなっていく連覇の道、残り2区間黄金世代の4年生にかける。
前半スローの明大櫛田選手がラスト定点間3位!
3位國學院河東選手は最後まで安定したペースで襷リレー。この世代が出遅れていたが、ようやく箱根駅伝で戦えるランナーが出てきたのは嬉しい。目標の3位を保ったまま、昨年の出走者が控える終盤へ。
序盤のスローが気になった明大櫛田選手は、なんだかんだ余力が残っていたようで、最後の3㎞は定点間3位の快走!一時27秒差まで詰め寄られた東国芳賀選手を、最終的に1分差に戻した。
追う方からすると、何ともしてやられた走り。序盤区間19位から、最終的に区間8位にあがってきているのですから、素質はやはり高い、来年自身の力を出し切ってほしい。
シード争いは僅かな差で中学大が前へ
6位に挙がった帝京鳥飼選手は最後まで力走。中野監督が嘘で「区間賞獲れるぞ!」と檄をしたのも、一つ効いただろうか。このあたりも”中野マジック”か。区間3位で帝京大を大きく流れに寄せた。
これにある程度追いすがったのは東洋前田選手。非常に長身ランナーだが、8区をある程度攻略できたのは将来性楽しみ。15㎞地点での給水は、競歩で東京五輪出場が決まっている川野選手でした。来年伸びてくるでしょうか。
8位は駒大加藤選手やや予想外の失速、1分以上後ろ9位は終始単独走で好走した早大太田選手。シード権争いはここから1分半後方だ。
残り1㎞を切ってから中学大藤井選手が、創価鈴木選手を突き放す。思い通りの走りではなかったが、後ろから追いつかれた中、ラストで屈する事はなかった。
凌いで総合10位キープして9区へ。創価大の初シード権めがけて7秒差に詰めての襷リレーとなった。まだまだこの両者のバトルは続きそうだ。
なお、この後方、約1分20秒差で拓大佐々木選手がリレー。前の2チームに牽制があれば、まだ追いつくチャンスがある位置をキープしているが果たして…。
国士清水選手、連合大東大吉井選手が終盤に力走
その後方から一斉スタート組。拓大から見える範囲で、13番目で神大安田選手。昨年より区間順位は上昇だ。14番目に途中力走があった順大西澤選手。最後は苦しくなったが、全体で区間9位。総合順位も13位に引き上げた。
続いて中大矢野選手に、国士清水選手が追いついての15番目争い。清水選手がラストで力走して定点間7番!箱根5区を希望していただけある印象だ。中大は3区から8区まで攻め区間としていた中、流れに乗り切れずここまで来てしまった。追い上げるには苦しい高速化だった。
続いてやってきたのが、ポジションを上げてきた連合の大東吉井選手。20番目だったが、すぐに日体嶋野選手を捉えて突き放すと、日大若山、法大中園選手らルーキーを一蹴。ラストは6番目相当のタイムで、全体でも区間9位相当のタイムだった。元々山登りを希望していただけあり、この8区でもしっかり走って来た。
そのあとにやってきた選手たちは、いずれも苦しい走りになった選手。日大若山選手が、14番目から18番目にポジションダウン。68分オーバーは今年は厳しい。
序盤飛ばした日体嶋野・法大中園選手も遊行寺坂でぐっと68分かかり、1分以上あけられてしまった。一斉スタート組も縦に伸びてきた。
襷繋げた、筑波大伊藤選手はラスト定点間8番!
さて20チームが通過した時点で見た目のトップとの差は17分13秒。元々1分半そこから遅れていて、ずっと区間最下位ペースだった筑波大伊藤選手の繰り上げスタートが心配になっていた。
18.4㎞影取の地点で18分48秒差に広がり、青学岩見選手の勢いからして、ギリギリのタイミングになるかと思われたが、20.4㎞(残り1㎞)の地点で19分03秒。差があまり広がらなくなった。
最終的に、伊藤選手は19分04秒の差で戸塚中継所でリレー。ラスト1㎞は1秒しか開かれず、ラスト定点間は全体でも8番目のタイムの粘りの走りだった。
筑波大の選手は、伊藤選手以外にも、最後の定点間はあげている選手が多い。箱根予選6位通過は、地道に培ったスタミナがモノを言ったといっても過言ではなかった。
高速化の箱根駅伝2020の中、単独最下位一人旅となった中、区間最下位が続いても、大きく差が付かなかったのは、間違いなくスタミナが活きているはずだ。
26年前は、手前の平塚中継所で途切れていた襷。ユニフォームは黒からフューチャーブルーに変わったが、変わらない桐の葉マークの入った襷を9区へ、繰り上げ無しで復路のエース区間9区に全チーム突入した。
総合優勝争いは、青学大が踏ん張って、東海大の逆襲を1秒にとどめ、その差はまだ2分。2年ぶりの覇権奪回に大きく前進した。その他も中位争いは選手層のある帝京大が本領発揮し始め、6位に浮上。シード権争いは以前中学大と創価大でのバトルが繰り広げられている。
全体的にも、まだ繰り上げスタートが出ないなど、差が無い状況で、まだ順位変動が見られそうな状況。復路エース区間9区が大事になってくる展開だ。