箱根駅伝2020が終わって時間がたちましたね。
今年も、区間ごとの定点間分析を行っていきます。
続いて、9区になります。優勝争いは勝負の復路エース区間。青学がヴィクトリーロードにつなげるか、東海大が望みをつなげるか注目が集まった。シード権争い他、様々な順位争いが、復路後半でも繰り広げられました。
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トップ青山学院大は3年神林選手を投入。高校時代から有名な選手ですが、箱根駅伝は今回が初出場。2分差で追う東海大松尾選手は3度目の箱根路。4年生の意地を見せていけるかどうか。
このほか、上級生や経験者がほとんど。帝京小森選手は3度目、明大村上、早大新迫、拓大中井選手は2度目の9区、國學院茂原・東国相沢、中学有馬選手は往路経験者。東洋と駒大も大澤・神戸選手とポイントとにらんでいた3年生の選手だ。実力者が揃っている。
また、最下位から走り出した筑波川瀬選手は、少なくとも戦後では初めてとみられる医学群の選手。5年生だが今期は出場条件があり、最初で最後の箱根路だ。優勝、シード権争い以外も色々見どころ満載の9区となった。
参考:84回篠藤(中学)22分30秒
スピードを生かす!区間新記録ペースで突っ込んでいく青学神林選手
青学神林選手が飛ばしていく。往路序盤に優位に立ってから、青学大の各選手は強気で攻めて入っていく。スピードランナーの神林選手も勿論早い入り。
5㎞通過は14分02秒で区間記録ペース。序盤はアップダウンを繰り返しながらも下り基調、得意な下りでしっかり稼いでいっている。
2位東海大松尾選手も、5㎞14分16秒で入り定点間2番のタイムで入っているものの、トップとの差は権太坂で2分23秒、じわりと開いていった。
3年連続9区、帝京小森選手が定点間3位の走りで突っ込んでいく
例年以上に過去経験者や往路経験者が多い中、各選手入りが速い。トップ2に続いて、定点間3番で入ったのは、6位スタートの帝京小森選手だ。3年連続の9区で前回は区間3位の選手。長いロードには自信を持っている。東洋大澤、駒大神戸選手らを突き放していくのだから大したものだ。
その前を行く東国相沢選手が定点間4位で走って前を追い上げているため、中々見えてこないが、このあたりはしっかり走っていきそうな気配だ。
シード権争いは突っ込む!中学有馬・創価石津・拓大中井選手
注目のシード権争いは緊迫した場面が続く。10位中学大有馬選手は、前回往路4区で区間一桁で走っている実力者。秋以降に調子を上げてきて、復路の要9区で区間5位相当の走りでしっかり逃げにかかる。
後ろ7秒差の11位でスタートした創価石津選手は、トラックのタイムでは劣るもロードで人が変わる選手。僅かに差が開いたが、7番目のタイムで10秒差、しっかり視界に捉える位置で追走。まだまだ分からない。
後ろ1分半近く差があいているが、12位拓大中井選手も区間9位。彼も2大会前に9区を走り、区間8位で走っている選手。視界には入っていないが、懸命にシード権を追っていっている。
連合・山学渡邊選手らぐっと前を追いかける走り
後方でも早い選手が何人かいる。13番目の神大古和田選手を多くのランナー追っており、とりわけ連合の山学渡邊選手が9番目相当と早い入り。国士福田選手を交わして、16番目に浮上。
今年は平成の時代ずっと続いていた初出場からの連続出場記録が途切れた山学大。8区では常連校の大東大の選手が出走したが、このあたり常連校の主力選手がどうやら意地を見せる形になりそう。
後ろ法大清家選手、筑波川瀬選手あたりもまずまずのタイム。筑波大はこの時点で見た目の差が20分オーバーしてしまったが、個人記録など見どころがありそうな展開だ。
参考:84回篠藤(中学)19分52秒<42分22秒>
東海松尾選手が意地を見せた区間、連続定点間2位で踏ん張る
青学神林選手は10㎞28分50秒で通過。原監督は「区間新ペース、お前のコースにピッタリだ。お前が勝負をかけてMVPを取るんだぞ、15㎞からが勝負だ」と檄。
一方、東海大松尾選手は10㎞29分12秒で通過も、両角監督は「権太坂を超えてからは、お前の方がいいペース」と檄。果たして、横浜駅前は2分35秒で踏み留めているところだ。
両角監督は「(昨年の湊谷)春記より30秒いい 神林は区間新ペース、お前も頑張ろう ここからの8㎞が長く感じるから大事だぞ。みんながお前を信じている」と声掛け。総合優勝は現実的に厳しくなりつつあるとはいえ、どこまで追いかけるかは大いに注目だ。
早大新迫選手が定点間3位力走!直後に駒大を抜いて8位浮上
上位チームの力走が目立つが、この定点間で3番目のタイムで走り抜けたのは9位を走っていた早大4年新迫選手。世羅高時代から有名な選手だったが、怪我や長い距離の対応などに苦戦していた。その中、2年連続の9区を任され、4年間育んだ力を見せている。
ちょうど横浜駅前定点で、単独走でペースが上がり切らなかった駒大神戸選手を捉えた。中継所で1分17秒あったのを追いついたのは中々のインパクトだ。給水を受けながら、交わしていったのは早大ファン沸いたシーンだろう。8位に浮上する。
中大大森選手が定点間6位力走!見た目で神大と順大を次々とかわす
権太坂を過ぎてからぐっと区間順位を上げている選手も何人かいる。この定点間良かったのは、中大大森選手。今回が初の箱根路だ。中大としては3区から8区が攻め区間として、追い切れなかったところ。大森選手が9区をうまく攻略しようとしている。
順大髙林、神大古和田選手の初出場の4年生組を交わしていき、見た目13番に、そして総合も13位に戻ってきたようだ。ちょうど中大主将の田母神選手から給水を受けていたが、その直後の14.8㎞単独見た目13番目。差は大きく離れているが、諦めずにシード権を追っていく。
法大清家選手が連続で定点間8位!繰り上げ回避が見えてきた
この後ろになってくると、青学大が快走を続けているだけに、繰り上げスタートが心配になってくるところ。好走をしているのは20番目でタスキを受けた法大清家選手だ。
権太坂までに日体野上選手を突き放して、直後の8.7㎞地点で日大橋口選手を捉えていた。横浜駅前までに50秒近くも突き放して、さらに2分程差があった国士福田選手も視界に入ってきたところだ。
ここで見た目18分27秒、中継所での17分13秒から1分少し開いたところ。このペースを維持できれば繰り上げ回避は充分にありえそうな感じだ。逆にこの地点で見た目19分以上となった日大と日体大が、やや厳しそうな状況になったところだ。
参考:84回篠藤(中学)17分14秒<59分36秒>
定点間トップ!東国相沢選手が明大村上選手を巻き込み3位争いへ
平坦とはいえ、僅かに上っていて、幅広い道が長く続くコース。このあたりは苦しくなってくるところ。
ここまで飛ばしてきた青学神林選手も口が空いてきて定点間4番。区間記録ペースを超えるタイムから、区間記録付近となってきたが、果たして個人記録がどうなるか。ところで、東海大松尾選手が険しい表情でぐっとペースが落ち込んだのが気になったが…
さて、そんな中、定点間トップだったのは、東国大相澤選手!復路に来たのがびっくりしていたがのだが、これはナイスな作戦だった。横浜駅前までもいい走りだったが、明大村上選手を捉えてから更なる力走を見せる。
激しいバトルとなり、並走の村上選手も定点間3番と一気にペースアップ。なんとだいぶ離れていたはずの3位国学茂原選手が眼前に迫ってきていた。茂原選手も横浜駅過ぎてからぐっとペースが落ち込んでしまっているが、粘れるかどうか、やや気になるところだった。
駒大神戸選手が定点間4位!早大新迫選手と白熱バトル!
横浜駅前でちょうど早大新迫選手が、駒大神戸選手を捉え、8位が入れ替わるところまで映像があったが、この2人ここから激しいバトルをしていた。
駒大神戸選手は、全日本駅伝3区でデビューするも区間二けたのブレーキ。総合優勝を逃す一因となってしまった。今回も途中までもう少しだったが、並ばれて切り替わったか。定点間4番の走り。
追ってきた早大新迫選手が一番苦しくなる20㎞地点で仕掛けて、数秒引き離したところで生麦定点。駒大がここで意地を見せる。
中学有馬選手が強い!定点間2位でシード権内キープ
シード権争いは動きがあった。中継所で7秒差、権太坂で10秒差、10㎞地点で再び7秒差。一進一退の攻防だったが、横浜駅前で22秒差になってから、中学大がじりじりと突き放し始めている。
それもそのはず、有馬選手は先ほどの定点間4位、そしてこの定点間は2位の素晴らしいタイム。春先は苦しんだが、状態が上がれば、さすが実力者。生麦定点で37秒差まで広げた。
とはいえ、創価石津選手も悪くない。榎木監督「名前やタイムが走るんじゃない、自分が走るんだ」3年ぶり3度目の出場の創価大にとってとても大事な言葉で鼓舞。石津選手も定点間7番のタイムで追走、我慢の走りとなっている。
参考:84回篠藤(中学)8分25秒<68分01秒>
青学神林選手、区間記録ならずも区間賞!力尽きた東海大に引導を渡す
区間記録を更新を目指して最後の粘りを見せる青学神林選手。原監督「残り1㎞2分45秒を切れば区間新記録」の檄に、何とかして動きを変えて対応を試みる。
だが、区間記録の壁は高かった。最終的に9秒及ばない68分13秒。この区間記録生麦以降凄まじいスパートがかかっている記録なので、近くまで行く選手がいてもなかなか破る事ができない記録となっている。
とはいえ、神林選手は3年生で初めての箱根で素晴らしい走り。2年まで伸び悩んでいたが、3年生で出雲区間賞。だが11月記録が出ず一時レギュラーボーダーに後退。同学年の吉田選手の喝も受けたとも。最後調子を上げてきて、この快走だ。主将となる次年度が楽しみだ。
東海大松尾選手はラスト非常に苦しくなった。残り1.5㎞で3分12秒差となったが、どうやらさらに開いた模様。最後に一気に30秒広がって3分42秒差に。ラスト3㎞は18番目となってしまった。中盤まで何とか抵抗を試みたが、最後に力尽きてしまった印象だ。
松尾選手自身も、大学駅伝で区間上位の成績は少なく、苦しい区間8位の結果だ。もっとも、1か月後の別府大分毎日マラソンで2時間10分台で完走しており、もしかすると大学駅伝の距離は、彼には短かったのかとか思ったが…。東海大としては、総合優勝はちょっと狙えなくなってしまった。
東国相沢選手が3位に浮上!國學院が失速し、一気に5位へ
面白いのが3位争いだ。東国相沢選手が最後まで快走。生麦定点直後に國學茂原選手を捉え、最後のスパートで並走していた明大村上選手を突き放して、なんと3位でやってきた。個人記録も69分04秒での区間3位。
上位の流れに乗っていたとはいえ、高校時代目立った選手ではなかった相沢選手がここまで成績を残すには、やはり東国大の育成力が相当なものと言えそうだ。チームも初のシード権どころが、メダルまで取れる位置となった。
わずかの差で4位の明大も、本当に下馬評を覆す好走。苦手だった駅伝についに順応して見せた。やってきた村上選手は昨年の経験はあるものの、決して今年は調子が上がっていなかった印象の選手。調整力がぐんと増してきている。
さて、続いて5位國學院茂原選手のはずだが、中々辿り着かない。3位が通過してから1分以上経過してようやく姿を見せた。残り3㎞で大幅に失速してしまった。出雲駅伝5区出走、初制覇の陰の立役者として取り上げられたが、全日本以降は悔しい結果に…。前田監督も「一旦は、目標の3位は諦めた」瞬間だった。
白熱した8位争い、早大新迫選手が定点間2位力走で制す
こうなると6位以降も結構詰まってくる。帝京小森選手が終始安定した走りで区間5位。今回出走者唯一の3年連続出走、昨年度の5位が狙える位置にチームを引き上げ役割を果たした。
続いて東洋大澤選手。10区予定だったが、主力選手の足の状態が思わしくなく、急きょ9区にコンバートされた中、70分02秒の悪くないタイムで走り切った。3位以内連続記録は厳しくなったが、意地を見せる。
さて、白熱していた8位争いだ。生麦定点で一旦駒大神戸選手が前に出ていたが、残り数百mのところで、爆発的なスピードがある新迫選手のスパートがさく裂!
この定点間2位タイのタイムで駆け抜け総合8位へ。大学時代は苦しみ、ずっと希望していた1区は叶わなかった。そして今回もピークは少しずれてしまったとのことだったが、69分17秒区間4位は4年生の意地だったか。一つ順位を押し上げてのリレーとなった。
中学有馬選手が定点間トップ!11位創価石津選手を55秒引き離す
中央学院大がリードし始めたシード権争い、有馬選手が終盤に快走。なんとラスト3㎞は全体断トツトップとなる8分37秒で駆け抜けた!最終的に区間2位となる68分56秒のタイムも素晴らしい。この区間の4年生の意地が凄い。
中学大としては、今年の秋、台風による水害で、千葉県我孫子市にあるグラウンドが使えないなど苦労があったが、それを感じさせない粘り。6年連続シード権、手中に収めたと、この時点では思われたのだが…
懸命に追いかける創価石津選手は非常に苦しい展開。ずっと区間一桁のタイムで走り続けていたにもかかわらず、前が徐々に離れていく展開。とはいえ、焦って硬くなってもおかしくない中、最後まで自分の走りは貫いた。初シード権、残り23㎞で55秒差。榎木監督は「ちょっと厳しい」「ワンチャンあるか」で揺れ動いていたという。
12位拓大はやや厳しくなったか。中井選手がずっと区間中位で走り続けていたものの、前の2校があまりにも早すぎた。10位とは3分近い差がついてしまったが、最後しっかり占めていきたい。
国士福田選手粘り切って、8年ぶり繰り上げ回避
この後ろは一斉スタート組。時差スタート組を捉えられそうで捉えられない状況。13番目中大大森選手がリレー、そのあと大健闘の連合山学渡邊選手が、見た目14番目まで浮上。総合でも17位相当にまで浮上していた。凸凹はあるとはいえ、戦っている。
15番目16番目は最初で最後の4年生の争いで、神大古和田・順大髙林選手がリレー。このあたりで見た目との差18分少し。続いて、構想を続けていた法大清家選手がリレー。区間7位の好走で、見事繰り上げ回避。見た目も20番目から17番目に浮上した。
繰り上げが迫る中、18番目でやってきたのは国士福田選手。ここのところ毎回復路で繰り上げにあっていた国士舘大だが、88回大会以来8年ぶりに繋がりそうだ。
福田選手は3大会前6区で屈辱の66分台。繰り上げとなる一因となってしまった。それ以来の箱根路、上位陣は歯が立たなかったが、ラスト3㎞定点間は13番目の粘りの走り。4年生の役割と果たしきった。国士大としても、昨年から総合順位は落としたが、襷を繋ぐという点では一つ前進した。
日体野上選手ペース上げきれず…、筑波川瀬選手定点間中位で力出し切る
だが、残り3チームが繰り上げ用の襷を既に肩から掛けて中継ラインへ。平均30秒かかると言われる鶴見中継所の直線、日体野上選手がやってきたのは残り10秒付近では間に合わない。
10区のランナーが大声で呼びかけるも、無情の繰り上げスタート。継続れの最多連続出場の古豪が涙した。さらに日大橋口選手は終始区間最下位付近のタイム、実力不足だったか。常連の伝統2校が、今回は本当に流れに乗れなかった。
その後ろ21番目最後方を走っていた筑波川瀬選手が案外早く中継所にやってきた。第1回大会優勝校が26年ぶりの出場、唯一の国立大など話題になったが、甘くはなかった。
そんな中、医学群5年川瀬選手は区間15位前後のペースをキープ。ラスト3㎞は11番目のタイムで切り替え、そして胸の桐の葉マークを指さしながら中継ラインを駆け抜けた。間違いなく、次年度以降に繋がるはずだ。
優勝争いは、やはり往路優勝していた青山学院大に決まりそうなところ、それでも見応えがあるバトルだった。シード権争いは中学大が創価大を一歩リードした状況でアンカーへ。
残り1区間となるが、3位争い、8位争いなど各チーム接戦が多く、最後までどうなるか分からない争いが、例年以上に増えている印象だ。最終決着もしっかり分析していきたい。