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【青山学院大学】第100回箱根駅伝2024振り返りと、次年度へ向けて

2月・3月上旬は、箱根駅伝出場チームの振り返りや、次年度への簡単な分析をしていきたいと思います。

まずは大会新記録での総合優勝!
青山学院大学です

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【青山学院大学】第100回箱根駅伝2024振り返りと、次年度へ向けて

 昨年度の箱根駅伝は、連覇を目指していて当時の4年生が充実していたものの、初の三冠を狙う駒澤大が強すぎた。往路平地までは互角の戦いを繰り広げたものの、山の綻びで優勝争いからは脱落し、総合3位だった。

 主力が多く卒業して、春は大きくは目立たず。原監督は「このままではシード権落ちの危機もある」とチームを鼓舞。夏合宿を経てから少しずつ選手が育ってきて、9月絆記録会で5千m13分30秒台ラッシュ!少しずつ勢いが出てきました。

 出雲駅伝は、駅伝初出走選手が多く5位と力を出し切れませんでしたが、主力が戻ってきた全日本駅伝ではまずまずの流れで総合2位は確保しました。とはいえ、総合優勝の駒大と3分34秒離されていた現実もありました。

 MARCH対抗戦で1万m28分20秒前後を叩き出す選手が続出して、士気が高まったかと思われましたが、直後にインフルエンザが蔓延。感染症は、原監督も初体験だったということで、かなり参った様子。今回走った選手のうち5名かかっていたそう。しかも4年生エース佐藤選手はその後虫垂炎にかかったり…。

 そんなところから、”負けてたまるか大作戦”が出てきました。駒大に…というより、まずはこの状況に負けたくないということだったそうです。12月中旬以降、無理に強い練習はすることなく、調整。ついに全体の調子が上がってきました。

 それでも、全日本駅伝は、優勝駒大とは大差。原監督は8割本音で「準優勝でいいぞ」とチームに声をかけたそう。駅伝力が高い選手を往路序盤に並べ、5区山登り若林選手に、駒大と1分以内で渡せればチャンスが出てくるか…そんな作戦だったそうです。その中、前日に黒田・太田選手が調子が上がり、当日になり佐藤選手の調子が上がり…作戦から遥かに上振れました。

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第100回箱根駅伝2024振り返り

1位青山学院大学10時間41分25秒

区間 区間順位 名前学年 区間タイム 通過順位 トップ差
1区(21.3㎞) 9位 荒巻朋熙② 61分37秒 9位 35秒差
2区(23.1㎞) 1位 黒田朝日② 66分07秒 2位 22秒差
3区(21.4㎞) 1位 太田蒼生③ 59分47秒 1位 -4秒差
4区(20.9㎞) 1位 佐藤一世④ 61分10秒 1位 -1分26秒差
5区(20.8㎞) 2位 若林宏樹③ 69分32秒 1位 -2分38秒差
6区(20.8㎞) 2位 野村昭夢③ 58分14秒 1位 -4分17秒差
7区(21.3㎞) 3位 山内健登④ 62分46秒 1位 -4分44秒差
8区(21.4㎞) 1位 塩出翔太② 64分00秒 1位 -5分33秒差
9区(23.1㎞) 1位 倉本玄太④ 68分51秒 1位 -6分23秒差
10区(23.0㎞) 2位 宇田川瞬矢② 69分21秒 1位 -6分35秒差

1区荒巻選手…一般視聴者は3区太田選手を、優勝のMVPに挙げる方は多いですが、チーム内でのインタビューを見ると、また違うようで。1区荒巻選手がMVP、優勝の流れを作った選手として、あげられることが多いですね。11月全日本6区の走りで、往路起用の目途が立ち、チーム内の感染症もどこ吹く風で万全な準備ができていたそうです。

 その中で、持ちタイムとしては格上だった駿河台レマイヤン選手や駒大篠原選手の一騎打ちを追走。途中で離れてしまいましたが、後方の集団内に追いつかれてから耐えしのぎ、区間9位もトップと35秒差に抑えた走り。このガッツに、2区以降の選手は気合が入ったそうです。

2区黒田選手…ここから目に見えて青学大の快進撃が開始します。昨年の出雲・全日本でも2区で好走し、”NEW駅伝男”として、非常に期待が高かった2年黒田選手。上りの適正もあり、2区でも5区でも区間賞争いができると非常に評価が高くなっていました。

 序盤はゆったりという指示もありましたが、飛ばして入った選手にはつかず、中団でじっくり構えます。権太坂までにトップ駒大と1分以上の差に開きますが、そこから一気に追い上げを開始します。留学生も追い抜いて、不動坂ではいつの間にか先頭駒大から見えるように。66分07秒の歴代でも上位に入る好タイムでの区間賞!トップ駒大との差を22秒まで追い上げます。

3区太田選手…そして誰もがびっくりした太田選手の激走です。確かに過去2年の箱根も凄まじい走りでチームの順位を引き上げて、そして今年度は初めて全日本駅伝から出場するなど非常に調子は上がっていました。それでも、前にいる駒大佐藤選手が、日本人最高記録の走りをした中で、それを上回る59分47秒のとんでも記録を出すのですから…。

 相手もまずまず突っ込んでいるところ、22秒差を7㎞過ぎに埋めていく突っ込み。10㎞は下りもありながら27分26秒と、1万mの日本人記録に迫る通過。その中で細かい駆け引きを含めて、相手の脚を削って、湘南大橋から満を持してスパート!2大会前と同様、それもさらに高いレベルで行って見せました。

 元々強い選手ですが、箱根駅伝となると、本当にスイッチが入るというか、”ゾーンに入る”選手です。結果的に、相手の駒大が3本柱を起用して、ある程度まとめていたところ、自慢の駅伝男で粉砕した形になりました。

4区佐藤選手…タスキを受けたのは4年生エース佐藤選手。1年時から主要区間を任され続けていて、今年度はトラックで大きく記録を伸ばしました。でしたが、駅伝は出雲3区全日本3区ともやや精彩を欠いてしまっていました。その中で、インフル感染、さらに虫垂炎にも罹ってしまい、一時は復路の7区8区か、出場も危ぶまれていました。

 その中で、29日の区間エントリーには佐藤選手の名前は4区へ。もう走るしかない状況でしたが、当日の朝練で調子が上向いたそう。1㎞2分40秒は突っ込みすぎでしたが、結果的に動揺が走っていた駒大に対して、大きく有効だったそう。そして、最後の箱根駅伝で初めての区間賞!先頭で山にタスキを渡します。

5区若林選手…2大会前、70分台の好走で往路優勝のゴールテープを切り、”若の神”と言われていたのが懐かしいですね。暫く、故障や体調不良などが重なり、中々表舞台に出てこれなくなっていましたが、全日本1区出走から自信を取り戻しました。

 11月に軽い故障があったおかげで、合宿でのインフル感染もどこ吹く風だったそうで、非常に自信を持って配置。駒大と1分以内ならチャンスあるというところで、先頭でタスキを受けました。じわじわと食い下がる駒大を引き離していき、旧区間記録を上回る69分32秒の好走!冷たい雨が降る中でも、力を出し切りました。往路記録となる5時間18分13秒で、力で先頭で折り返します。

6区野村選手…高校時代から有名な選手。山下り候補1番手と言われながら、故障が多く中々日の目を見なかった選手。9月絆記録会で13分30秒台を出し、出雲1区を担当。やや入れ込み過ぎたところはありましたが、力はついてきていました。

 下りに入ってから切り替えると、一気に区間賞そして57分台も見えるようなところまでペースアップ。この区間を走る中でスピードはトップクラスでしたが、ついに大学でも快心に近いレースとなったのではないでしょうか。58分14秒の区間2位、2位駒大と4分以上の差がつき、ほぼ総合優勝を決定づけました。

7区山内選手…こうなると、青学大がどんどん攻めのレースをして後続との差を広げていく一方的なレースになります。タスキを受けた4年山内選手は、関東IC1500m2年連続表彰台に上がっているスピードランナーながら、箱根は初めて。1年時全日本6区出走も、首位を明け渡してしまい、長らく駅伝で出番が訪れませんでした。

 4年生になり、久々登場となった出雲駅伝で4区区間賞。全日本も登場すると、それ以降は絶好調をキープ。1区荒巻選手と山内選手がインフル感染などなく継続して練習が積めていたそうで。佐藤選手がダウンした時は、往路候補にも挙がったそうです。区間記録ペースからはさすがに遅れましたが、62分台の区間3位と、最初で最後の箱根で役割を果たします。

8区塩出選手…元々ロード巧者の3年田中選手がエントリーしていましたが、実は故障していて当て馬。当日変更で入ったのは、同じくロード巧者とみていた2年塩出選手。1万m記録会などは目立ってませんでしたが、世田谷ハーフ62分台をマークするなど、長い距離には自信がありました。

 区間記録をやや上回るペースで進んでいき、遊行寺坂を超えてからも、好調な走りをキープ。区間記録には僅かに届かなかったものの64分00秒の青学大記録で区間賞。8区のイメージが強い下田選手の記録を上回ったのですから、青学大のチーム力が上がったと言えます。

9区倉本選手…復路のエース区間9区を任されたのは、最初で最後の大学駅伝となった4年倉本選手。高校時代の持ちタイムは佐藤選手に次いで2番目でしたが、故障なども重なり苦しんだ時期も長かった。今年の出雲駅伝前に調子が上がりましたが、選考レースでは、脚を踏まれてしまう不運もありました。

 それでも、世田谷246ハーフ・MARCH対抗戦と調子を上げてきて、最後に出走権を勝ち取りました。横浜駅前まで区間記録に近いペースを刻んで、後半は苦しくなりましたが、68分51秒で区間賞獲得!先頭を突き抜けました。

10区宇田川選手…アンカーを任されたのは新戦力2年生宇田川選手。1500mが得意種目で、関東IC1500m優勝していましたが、世田谷ハーフで63分少しで走り切るなど、長い距離も適応していました。序盤、区間記録を超えるスピードを見せたのはさすが、そこから一時ペースダウンしますが、ラスト3㎞をまとめ直して、69分21秒の区間2位!大会新記録もかかっていたところでの走りで、優勝に華を添えました。

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 レース前、過剰な優勝への意識を感じ取った原監督から「準優勝でもいいぞ」と声をかけたそう。ここから、選手内のみのミーティングでもう一度、大一番へメンタルを整え直していたそうですが…これが箱根駅伝通じてマラソンへの育成に力を入れる青学大の底力を見ましたね。

 また、駒大佐藤選手を抑えれば、何とかなるかもしれないということで、2区黒田3区太田選手に、世界最先端の”勝負シューズ”を投入していたそうですね。そこで、前が見える位置に留まれば…だったのが、逆転してしまったのですからね。出雲・全日本は、スピード負けしましたが、箱根駅伝への調整力は、青学大がずば抜けていたとしか言いようがないレースでした。

次年度へ向けて

 前人未踏!10時間40分切のラインにいけるのか!?

残る今年の箱根メンバー
黒田朝日②28分15秒82≪24箱2区1位、23全2区2位、出2区1位、関東IC3障2位≫
太田蒼生③28分20秒63≪24箱3区1位、23全7区5位、箱4区2位、22:箱3区2位≫
若林宏樹③28分25秒71≪24箱5区2位、23全1区8位、箱5区3位≫
荒巻朋熙②28分32秒48≪24箱1区9位≫
宇田川瞬矢②28分43秒70≪24箱10区2位≫
塩出翔太②29分20秒91≪24箱8区1位≫
野村昭夢③29分39秒23≪24箱6区2位、23出1区7位≫

残る補欠メンバー
白石光星③28分27秒96≪22全2区16位≫
田中悠登③28分35秒60≪23全8区3位、箱8区5位、22:出5区6位≫
皆渡星七②28分49秒30
平松享祐①28分59秒29

その他有力選手
鳥井健太①28分33秒64≪23出5区10位≫
佐藤有一②29分02秒24
神田大地②29分29秒15
石原正翔②29分33秒40
鶴川正也③half62分44秒≪23出6区8位、関東IC5千3位≫
折田 壮太≪24全国1区5位、23高校1区1位、IH5千5位≫
飯田 翔大≪24全国1区9位、23IH5千12位≫
佐藤 愛斗≪23高校3区21位≫
安島 莉玖≪24全国1区3位、23IH5千15位≫
福富  翔≪23高校4区4位≫
黒田  然≪23IH3障2位≫
船越  碧≪23高校4区4位、IH3障13位≫

 現時点では、箱根駅伝強い強い!ですね。特に今年の往路優勝をしたメンバーのうち4名が残っているのは非常に大きいです。まだまだ底を知らないエースの黒田選手はまだ新3年生ですし、まだ2年間エース区間2区を任せて、状況次第では区間記録レベルで他校相手にリードを奪うことが可能です。

 箱根駅伝に愛されている太田選手もいますし、あの留学生の区間記録も狙っていく構えか。精神的にたくましくなってきた山登り若林選手も、68分台の区間記録も視野に入れての練習になっていきます。今回は1区でしたが、単独走もできるので、4区などほかの区間もこなせそうな荒巻選手がいます。

 復路メンバーも相変わらず強力で、平地でも抜群のスピードを誇る山下り野村選手は、今回の経験から57分台とさらなる短縮を狙うと思います。8区出走の塩出選手は丸亀ハーフで61分台のベストタイム突入し、復路エース区間の穴を埋めれそう。宇田川選手もまだまだ伸び盛りでしょう。

 補欠メンバーには、全日本アンカーで故障が無ければおそらく箱根出走していた田中選手が、新4年生主将として引っ張っていきます。一度全日本大学駅伝出走している白石選手が、あと少しのところまで走力をあげています。新2年では将来中心になると言われている平松選手が非常に安定しています。

 またエントリー外では、世田谷ハーフ優勝で、一時は箱根8区内定していた鳥井選手がいますし、何よりこの世代トップだった鶴川選手も、最後の箱根当然諦めていないでしょう。関東ICでは、留学生とも対等に渡り合うスピードを変わらず見せていますし、最終学年で故障が少なくなると、一気にエース格になってくる選手です。

 これに過去最強補強と言われている新入生が加わってきます。5千m高校歴代2位の折田選手や、同歴代4位の飯田選手が青学へ、日本人のみなのに、上位5名の5千m平均は13分46秒だとか…さらに、ここまで3障主戦場の黒田選手の弟さんが入ってきたり、法大→駿河台大監督の徳本さんのご子息も入られるそうで…。

 なにやら、いつかの東海大の鬼塚・館澤・關選手らの黄金世代とか、そのくらいの補強になってきています。そのうえで、上級生も非常に強いですので、青学大第2黄金期になっていくかもしれない…それを感じる戦力です。

 このところ、戦力が整っているのではないかと思われるタイミングで連覇できないジンクスが続いていましたが、原監督が早くから「10時間30分台のさらなる高速レースへ」持ち込んでいく宣言へ。まだ青学大の勢いは加速していくかもしれません。

まとめ

・就任初のインフルエンザ集団感染
・その状況から出た”負けてたまるか大作戦”
・気負いをみて”準優勝でいいぞ”の箱根直前の掛け声
・チーム内からMVP1区荒巻選手の粘り
・駒大の思惑を止めた2区黒田3区太田選手の大激走
・1分以内なら…の5区若林選手にトップで襷リレー
・復路初出走者多くも、区間記録へ攻めた走りで大会新!
・往路優勝者4名残り、さらに田中・鶴川選手らの4年生
・新入生は、過去最強世代!黄金世代を超えていくか

 昨年の箱根駅伝直後は、多くの主力選手が抜けて、次は我慢の年になると言われていました。でしたが、チャレンジャーの時の青学大の怖さも知っていました。それでも、駒大がミスをすればチャンスあるかも…でしたが…駒大がほぼノーミスでも、力をもってねじ伏せていく所まで力をつけていました。

 1年通して順調だったわけではありません。夏合宿前はシード権落ちも覚悟という状況、出雲駅伝は、持ちタイムは伸びましたが初出走の選手中心で凸凹駅伝、全日本駅伝は黒田選手ら新戦力でまずまずの流れで総合2位も、駒大と大差がついていました。

 MARCH対抗戦で自己ベストラッシュも、その後にインフルエンザ感染が流行。青学大原監督になってからは初めてだったそうで、結構てんやわんやになったそうです。箱根エントリー選手も多くかかりました。

 とはいえ、箱根駅伝ではその感染していた5名黒田・太田・佐藤・塩出・倉本選手が区間賞を獲得して、駒大ら他強豪校を圧倒していくわけですから、本当に分からないものです。

 一つポイントとなったのは、インフルエンザが明けてきた12月中旬以降に、急いでポイント練習を入れるということはしなかったそうで、このあたりは長く箱根駅伝優勝~上位を続けてきたうえでの勘だったのでしょう。それまでの練習量が豊富でこなせたので大丈夫だったのでしょう。

 今回の大会新記録を出したメンバーが多く残り、さらに過去最強レベルの新入生が入ってきます。原監督はすでに次を見据えて10時間40分切の勝負をしかけていく準備を進めていっています。このまま青学大がもう一度黄金期を築いていくか、他の強豪校が凌ぐ勢いで追い上げていくのか、注目の1年になります。