【順天堂大学】第98回箱根駅伝2022振り返りから、次年度へ向けて

2月中は、箱根駅伝出場チームの振り返りや、次年度への簡単な分析をしていきたいと思います。

順番は総合順位順から変えます。

まずは、総合優勝した83回大会以来、15年ぶり表彰台となった順天堂大となります。

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【順天堂大学】第98回箱根駅伝2022振り返りから、次年度へ向けて

 前哨戦、出雲駅伝は関東地区最下位の10位。とはいえ、途中でアクシデントがあったもの。3区途中でトップに立つ場面もありました。1区2区好スタート、流れが切れた5区6区も良かったですし、今思えば、全日本・箱根の躍進も予感があった。

 全日本駅伝は2区三浦選手で先頭に立つと、3区以降はほとんど上位戦線をキープ。6区牧瀬選手でトップ争いに再度浮上した。順大やや不得手の7区で後退したものの、8区四釜選手がトップ3表彰台確保していた。

 箱根本戦は、エース区間2区予定の野村選手が調子上がり切らず、三浦選手急遽2区に回るアクシデントがありましたが、やはり強かった。

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箱根駅伝2022振り返り

🥈位順天堂大学10時間54分33秒
往路5位5時間26分10秒・復路5位5時間28分23秒

区間 区間順位 名前学年 区間タイム 通過順位 トップ差
1区(21.3㎞) 18位 平 駿介③ 63分52秒 18位 3分12秒
2区(23.1㎞) 11位 三浦龍司② 67分44秒 17位 4分04秒
3区(21.4㎞) 🥉位 伊豫田達弥③ 61分19秒 10位 3分21秒
4区(20.9㎞) 🥈位 石井一希② 61分31秒 7位 3分06秒
5区(20.8㎞) 5位 四釜峻佑③ 71分44秒 5位 4分04秒
6区(20.8㎞) 🥇位 牧瀬圭斗④ 58分22秒 3位 3分23秒
7区(21.3㎞) 7位 西澤侑真③ 64分08秒 3位 4分52秒
8区(21.4㎞) 🥇位 津田将希④ 64分29秒 2位 4分32秒
9区(23.1㎞) 13位 野村優作③ 70分39秒 2位 7分56秒
10区(23.0㎞) 14位 近藤亮太④ 70分45秒 2位 10分51秒

1区平選手…出雲駅伝で2区で駅伝デビュー区間3位好走。全日本駅伝では1区を務めていて、前哨戦では前半区間のキーパーソンとなっていました。長い距離の実績が少なかったのが不安でしたが、箱根駅伝でも1区起用でした。

 ただ、区間記録レベルのペースではやや苦しかったですね。3番目に早く遅れだすと、そのまま浮上はできず区間18位。トップと3分12秒離れてしまい、この時点で総合2位になるとは予想付きませんでした。

2区三浦選手…前年区間10位だった1区のリベンジの予定でしたが、他の選手の状況や、強度の高い練習がこなせていたということで、エース区間2区に回りました。

 後方から追い上げる展開でしたが、日体大の選手と並走しながら早いペースを維持。駿河台大と専修大を捉えて16位タイに浮上しましたが、最後上りはやや苦しかった模様。日体大に引き離され17位でリレー。

 とはいえ、区間11位67分44秒は、準備や駅伝の流れからすると、うまく繋いでいます。また、前が点々とする位置にまで追い上げることができたので、流れを作り直した形です。

3区伊豫田選手…2年連続3区の伊豫田選手が強かったですね。昨年も他校のスピードエース選手と好走、今シーズンも出雲1区・全日本3区でしっかり区間上位の走りをしていましたが、予想以上の強さでした。

 序盤から、区間賞&日本人区間記録レベルのペースで飛ばして入ると、定点間で映るごとに次々と順位を上げていきました。東海大・明大・日体・早大・神大を早めに捉えると、茅ヶ崎で連合も交わすと、

 最後は2分半以上離れていた創価大を捉えて、なんと総合10位まで浮上。区間賞こそ逃すも、61分19秒区間3位と歴代にも残る記録を樹立。一気に上位が目指せる位置にまで浮上しました。

4区石井選手…この流れを石井選手が受け継ぐのですよね。前回も4区区間5位好走、今年は磨きがかかっていました。すぐ後方だった、創価大嶋津選手に交わされることになりましたが、食らいついて次々に順位を上げていきました。

 山学大・法大を交わして、ラストの争いで中大に競り勝ち、最終的に区間2位の好走で総合7位に浮上!前4位までしっかり見えています。出雲5区後方単独走で好走、全日本4区は珍しく外しましたが、この結果を見ると、箱根へ向けての”溜め”だったのかと思ってしまうほどでした。

5区四釜選手…3年生今年の成長株ですね。昨年5月、関東IC1部ハーフ日本人トップの4位に入って一気に話題になりました。2年時の箱根予選でチーム12番手、本戦16人入れず、悔しさを爆発させたものでした。

 その後記録が伸び、出雲・全日本ともにアンカー。全日本はチームを3位に挙げる活躍、箱根は5区で区間記録となる69分30秒を目標にするほどでした。でしたが、12月調子が上がらず、それでも区間賞を目指しての出走でした。

 最初の平地で、突っ込んで前との差を詰めにかかりますが、上りで創価大を交わすも中大に交わされ、一進一退の攻防に。その後は、脚の痙攣もあったそうですが、東国大と中大を抜き返しての往路5位。区間順位も5位、不調ながら役割を果たしました。

6区牧瀬選手…復路の真骨頂は、1人目の4年生牧瀬選手から。3年時まで箱根未経験ながら、主将を任されチームを引っ張ってきました。この世代が4年になった時、当初は特徴のない金太郎飴と言われましたが、懸命の努力、

 全日本駅伝では2年連続6区で、途中までトップ争いに食い下がる走りを見せました。最初で最後の箱根路は6区山下りとなりました。序盤の上りから区間賞ペースで突っ込むと國學院大を交わします。下りでも加速しガンガン前を追っていきます。

 16.2㎞で2位争い並走の帝京大と駒大の間に割って入りながら抜いたシーンは印象的でしたね。1区18位からここまで上がってきました。最後の平地はさすがに苦しくも、帝京大を競り落として3位中継。58分22秒で区間賞獲得!順大一つ目の区間賞でした。

7区西澤選手…これで3年連続箱根路となる西澤選手が7区でした。当初は10区予定でしたが、往路の流れを受けて、長門監督が急遽変更したところです。序盤は、目の前の駒大からやや離れていきますが、10㎞手前から攻勢を開始、

 10.2㎞で駒大を捉えて一気に単独2位に浮上します。そのまま20秒近く広げますが、そううまく前回王者は逃がしてくれません。19㎞で捉えられると単独3位に後退、そのまま10秒程離されますが、ここからまた粘ります。

 残り1㎞を切ってから、もう一度駒大を追い上げ、最終的に1秒差の3位。区間順位は6位でしたが、秋はほとんどレースに出ていなかったこと、前日に担当区間が変わったことを考えると、懸命の粘りでした。

8区津田選手…そしてびっくりだったのが津田選手。前回5区山登りを走っていて、上りが終わるまで区間一桁。終盤は低体温症気味で失速、上りの部分は強いという印象でした。

 相手駒大は故障明けながらエース格。序盤区間記録ペースにも食いつくと、相手のペースが落ちた12㎞過ぎ、一気に突き放していきました。単独2位浮上すると、遊行寺坂以降もペースを維持。見事に順大2つの目の区間賞獲得!

 駒大が大きく失速したため、3位以降とは大差。トップ青学大とは4分半の差がありましたが、気持ちでは総合優勝を追っていきました。金太郎飴世代と言われましたが…、物凄く太く力強い金太郎飴となりました。

9区野村選手…ここからは、青学大の総合力に成すすべもなく…という形でしたかね。野村選手は、チームのエース選手の一人でしたが、秋口に内蔵疲労、出雲3区では大きく失速、繋ぎに回った全日本駅伝5区で復調の兆しを見せていましたが、そこから上がり切らなったですかね。

 箱根2区は回避も、9区で自信を持って起用でしたが、70分39秒の区間13位。青学大からは3分半近い大差。3位とも1分ほどまで詰められてしまったのは悔しいところ。来年は絶対2区を走りたい。

10区近藤選手…3人目の4年生、とはいえ元々10区は西澤選手の予定だったので、急遽の出走です。全日本7区の経験がありました。序盤突っ込みましたが、中盤以降はやや苦しみましたかね。

 それでも、後方見え隠れ手していた3位争いの叩き合いからは何とか逃げ切って、総合2位確保。9区10区が区間二けただったので、復路の順大はお預けとなりましたが、名門順大としては15年ぶり好成績でした。

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 近年の高速化では、一つの区間でミスが出ると、取り戻すのが大変な印象でしたが、順大は見事に取り戻した…どころか、総合2位に君臨しました。

 オーダーの変更も最低限にしたのが良かったでしょうか。2区三浦選手にしたなら、出雲1区担当の伊豫田選手を、3区から1区にしてもおかしくなかったはずです。

 ですが、そこは変えずに、上位ではないながらも、自信を持って準備をしていた3区伊豫田選手(と4区石井選手)は、そのままにすることで、いいオーダーになったのかなと思います。

次年度、2022-2023シーズンに向けて

 目標としては、総合優勝だったので、2位は悔しさも残る形ですね。ここを次につなげていきたい。

残る今年の箱根メンバー
伊豫田達弥③28分06秒26
≪22:箱3区3位、21:全3区5位、出1区5位、日本IC5千m7位、関東IC1部1万6位、箱3区5位、20:全2区14位、予24位≫
野村優作③28分19秒01
≪22:箱9区13位、21:全5区2位、出3区16位、日本IC5千m9位、関東IC1部1万5位、箱2区10位、20:全4区3位、予12位、19:出5区13位≫
三浦龍司②28分32秒28
≪22:箱2区11位、21:全2区1位、日本IC3障1位、五輪3障7位、日本3障1位、関東IC1部1500m1位5千2位、箱1区10位、20:全1区1位、予5位≫
四釜峻佑③28分36秒03
≪22:箱5区5位、21:全8区2位、出6区4位、関東IC1部half4位、20:予75位≫
平 駿介③28分48秒40
≪22:箱1区18位、21:全1区11位、出2区2位、関東IC1部5千15位≫
西澤侑真③28分50秒37※新主将
≪22:箱7区6位、21:関東IC1部1万15位、箱8区10位、20:全8区12位、予31位、箱8区9位、19:全6区3位≫
石井一希②28分54秒78
≪21:全4区14位、出5区4位、関東IC1部5千9位、箱4区5位、20:全5区5位、予21位≫

残る補欠メンバー
荒木勇人③28分48秒87
海老澤憲伸①29分06秒97
藤原優希②29分27秒90
神谷青輝①29分48秒57
服部壮馬①5千m13分55秒56
≪21:出4区14位、日本IC3障8位、U20日本3障1位、関東IC1部3障2位≫

その他有力選手
浅井皓貴①28分45秒31
内田柾冶②29分12秒79≪21:予30位≫
堀内郁哉③29分21秒91
出口静之心②29分49秒18
村尾雄己(新入生)5千m13分58秒04≪21:高4区5位≫

 順天堂大は来年度集大成ですね。今回3年生は、区間順に、平選手・伊豫田選手・四釜選手・西澤選手・野村選手と5選手が走っています。長門監督は”カルテット”と呼んでいます。さらに補欠に1万m28分台の荒木選手もいます。次年度は、何としてでも、総合優勝奪回を狙っていく年でしょう。

 特に伊豫田・四釜選手は、ここでいけるという区間がありますし、大きなポイント。野村選手の調子が上がって、往路を任せられるようになれば、三浦選手を1区に戻せますし、本気で往路優勝を狙っていく事ができるかもしれません。2年生の石井・三浦選手も往路で戦えるのはポイントです。

 復路に関しては、今年の躍進を支えた4年生の世代の活躍が大きいので、なんとも言えませんが、過去3度走り2度区間一桁の西澤選手が中心ですね。先日の大阪ハーフでは、2年藤原選手が63分20秒出していました。海老澤・服部選手ら1年生の選手もひとまず経験を積んで、次年度飛躍していけます。

 他にも、1万m28分台を一度出している浅井選手、一昨年の箱根予選で62分台で走っている内田選手、さらに、佐久長聖高校から主力選手村尾選手も加入予定です。チーム内の競争も激しいです。

 こう見ると、出雲駅伝・全日本大学駅伝も、ワンチャンスあり…のような気がします。まだ先ですが面白い。個人としては、伊豫田選手ら1万m、三浦・服部選手らの3000m障害にも注目です。

まとめ

・1区18位から、高速化で難しくなった追い上げで2位まで浮上!
・万全の準備でなくても、2区67分台の3障オリンピアン三浦選手
・とんでもない追い上げ!2年連続3区伊豫田4区石井選手
・万全でなくても区間5位まとめた今季成長株5区四釜選手!
・金太郎飴世代の真価!6区牧瀬8区津田選手区間賞で2位進出!
・表彰台は、最後の優勝83回大会以来、15年ぶり!
・9区10区苦戦で、”復路の順大”の復活はお預け!
・次年度は、”カルテット世代”最終学年、集大成の年!

 準優勝した順天堂ですが、1区18位から始まっていたのですよね。それから6区で2位争いに加わって、8区で総合2位がほぼ確実になるところまで物凄かったです。万全の準備でなくてもエース区間2区で67分台、絞り出した3障オリンピアン三浦選手、

 ゴボウ抜き演じた3区伊豫田選手、他校のエースと競いながら順位を上げた4区石井選手、出雲・全日本ほどの調子でないながら5区山登り区間5位でまとめた四釜選手とそれぞれ役割を果たした往路選手。

 復路では、2位争いに加わった6区牧瀬選手、2位を決定づけた8区津田選手の4年生2人が区間賞!金太郎飴世代の活躍で総合2位確保。これが、復活優勝の序章になるかは、カルテット世代が4年生になる次年度次第です。本当に今、勢いのあるチームです。


hakonankit

箱根駅伝の魅力に3歳の頃から取りつかれ、今や全日本大学駅伝や出雲駅伝を含めた大学駅伝、その予選会。大学長距離界がとても大好きな人間です。ブログでは10年以上にわたり、追いかけています。