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【過去を振り返る】第74回箱根駅伝-5区編-

20年前の箱根駅伝を振り返る企画の続きです。

第74回箱根駅伝、続いては4区になります。

トップ早大・酒井選手のペースがあがらず、一気に大混戦に!

初往路優勝を狙う駒大・足立選手、更に2連覇を狙う神大・勝間選手、
さらに区間賞候補山学・横田選手、4年連続5区中大・緒方選手…

2度の首位交代劇の激戦となりました。

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5区

スタート順位

酒井秀行(早大3)①
足立康光(駒大4)②1:33
尾方挙志(中大4)③2:44
勝間信弥(神大1)④2:46
佐藤功二(順大2)⑤4:07
横田一仁(山学3)⑥4:24
飯田茂雄(専大1)⑦4:35
渡辺尚幹(日大1)⑧4:44
高須則吉(拓大3)⑨5:06
松下泰平(大東3)⑩7:02
古嵜英俊(東海2)⑪8:36
千原詩郎(東洋4)⑫11:47
佐藤洋平(日体1)⑫11:47
鈴木 朗(関学3)⑭14:09
小川直也(帝京1)⑮15:20

2年ぶり往路優勝を狙う早大は1分半の貯金で苦手な山に。初往路優勝を狙う駒大が1分33秒差、4年連続5区を担う中大緒方選手が2分44秒、優勝候補の神大は2分46秒…。見る側としては面白い差で山に入っていった。

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大平台7.1㎞

10位酒井秀行(早大3)24分23秒①
3位足立康光(駒大4)23分23秒②0:33
1位勝間信弥(神大1)23分15秒③1:38
2位尾方挙志(中大4)23分17秒③1:38
4位横田一仁(山学3)23分27秒⑤3:28
7位高須則吉(拓大3)23分42秒⑥4:25
8位渡辺尚幹(日大1)24分04秒⑥4:25
15位佐藤功二(順大2)24分49秒⑧4:33
12位飯田茂雄(専大1)24分28秒⑨4:40
5位松下泰平(大東3)23分35秒⑩6:14
9位古嵜英俊(東海2)24分21秒⑪8:34
6位千原詩郎(東洋4)23分37秒⑫11:01
13位佐藤洋平(日体1)24分36秒⑬12:00
11位鈴木 朗(関学3)24分26秒⑭14:12
14位小川直也(帝京1)24分43秒⑮15:40

早大・酒井選手は2年連続の山登り。前回はエースの体調不良で31日に急きょ決定し区間9位。優勝争いから脱落してしまった苦い思い出がある。今回は5区に標準を絞って準備してきている。5区を考えすぎて、夢の中で中大・尾形選手に箱根山中で追われる夢を見たとか…。現実、追われる展開となっている中、最初の1㎞は3分01秒。解説の碓井さんは『やや早い』との評だった。

その碓井さんが『早すぎる』と評したのは、3位でスタートした中大・尾形選手。なんと最初の1㎞2分47秒だそうだ。これにはたまらずすぐ後ろの神大・勝間選手は50m引き離されるものの、彼も2分55秒なのでかなり速いペース。なお、区間記録保持者の小林雅幸選手は”抑えて入って”2分55秒だったそうなので上りがじわじわ始まっている中、全員攻めに言っているそうだ。

なお、尾形選手は4年連続山登りの選手。過去は区間3位3位2位の非常に好成績。前回、トップを行く早大・酒井選手より4分早かったそうだ。2分半の差なので普通に走れば逆転可能なのだが、最初の突込みが心配となった。それは早くも現れはじめ、2-3㎞が3分20秒かかり3㎞9分24秒。イーブンで刻む勝間選手の姿が再び大きくなり始めていた。このあたり気になるところだ。

トップ酒井選手は函嶺洞門を11分55秒で通過。小林雅選手はここを11分05秒で通過したそうで、ここはスピードがまるで違うといった形になった。解説では「最初は自分のリズム、上りがゆるやかなところでタイムを稼ごうと思わない」との話。まずは酒井選手が自分のリズムを刻んでいることを祈りたいところ。

3位争いは、5.2㎞でついに勝間選手が尾形選手で追いつき2人の争いに。尾形選手も5㎞通過16分24秒通過は区間記録より17秒遅いだけで、勝間選手がかなり凄いという事だ。大後コーチも「大物、物おじしない」との評、更に下りが昨年まで4年連続で出走していた近藤選手以上とのこと、この後の追い上げに注目が集まった。

先頭、酒井選手は大平台のヘアピンへ。そこでカメラが引いた映像になったが驚いた。1分半離れていたはずの2位駒大・足立選手の姿が映ったのだ。大平台でその差33秒差。確か中継所では1分33秒あったはずなので、一気に1分詰めてきたのだ。その後に通過する神大と中大ともそん色のないタイムで走っており、区間賞争いの走りだった。これは一気に首位逆転の様相となったが果たして…。

5位は順大を3.5㎞で捉えた山学・横田選手が通過。前と1分50秒離れている状況だが、やはり区間賞候補ペースをきっちり刻んでいる。6位は順大ではなく、拓大・高須、日大・渡辺選手がそれぞれポジションをアップしている。その後ろに順大・佐藤選手が8位通過。ここまで区間最下位とやや苦しい走り、9位の専大・飯田選手にも捉えられそうだ。

大きく離れたその後ろがそれぞれ良い走りで1分30秒以上離れて10位大東・松下選手が5番目のタイム、2分20秒離れた11位東海・古嵜選手は2年連続の山登り、そこから2分20秒離れた12位東洋・千原選手が6番目のタイムで通過。差が離れているが、箱根山中で流れを取り戻せるだろうか。

小涌園11.6㎞-大平台7.1㎞=4.5㎞

3位足立康光(駒大4)17分42秒‹3›41分05秒①
12位酒井秀行(早大3)18分48秒‹11›43分11秒②0:33
2位勝間信弥(神大1)17分37秒‹1›40分52秒③1:00
5位尾方挙志(中大4)17分59秒‹4›41分16秒④1:22
1位横田一仁(山学3)17分34秒‹2›41分01秒⑤2:47
6位渡辺尚幹(日大1)18分01秒‹7›42分05秒⑥4:11
8位高須則吉(拓大3)18分27秒‹8›42分09秒⑦4:37
15位佐藤功二(順大2)19分08秒‹15›43分57秒⑧5:26
14位飯田茂雄(専大1)19分04秒‹14›43分32秒⑨5:29
4位松下泰平(大東3)17分48秒‹5›41分23秒⑩5:47
12位古嵜英俊(東海2)18分48秒‹10›43分09秒⑪9:07
7位千原詩郎(東洋4)18分16秒‹6›41分53秒⑫11:02
10位佐藤洋平(日体1)18分40秒‹12›43分16秒⑬12:25
9位鈴木 朗(関学3)18分36秒‹9›43分02秒⑭14:33
11位小川直也(帝京1)18分44秒‹13›43分27秒⑮16:09

上位争いは急を告げていた。駒大・足立選手があっという間に追い上げてくる。7.1㎞で33秒差だったのが8.3㎞で10秒差、8.5㎞で5秒差となる。足立選手は2年生の終わり頃に寮を出て一人暮らしをという。それほど自分のペースを大切にしていた、それでいて信頼されるランナーになりたかったそうで。、

その足立選手が8.9㎞ついに首位の座に立つ。早大・酒井選手が一瞬抵抗する形はあったものの、直に差が広がり始める。駒澤大が5区でトップに立つのは史上初めての事だ。首を振りながら、そして口が空いてきているが、しっかりした足取りで小涌園を通過する。本人は「後半のペースダウンが課題」と口にしていたそうだが、まずはこのまま初の往路優勝できるかどうかだ。

抜かれた早大は「無理していない、下りに自信がある」とのことだが、小涌園の時点で33秒差と開いてしまった。大平台では33秒リードだったので4.8㎞で1分06秒遅れたことになる。定点間でも12番目のタイムという事で今年も苦戦、山に泣かされることになってしまった。

さてその後ろの争いだ。大平台直後の7.7㎞で神大・勝間選手が中大・尾形選手を5mほど突き放す映像が映った。尾形選手がいつにも増して苦しそうだ。宮ノ下手前では意地を見せ再び並走する場面が見られたが、9.9㎞再び勝間選手がリードを取るようになった。

その勝間選手の勢いが凄い。パワーで駆け上がっていく。夏合宿でチームメイトから「5区行ける!」と口々に言うほどの適性だったという。OB近藤選手と同じ洛南高校だそうだが、このあたりパイプが生きているだろうか。小涌園では1位と1分00秒差、2位とも27秒差となっており、一時遠のきかけたと思われた2年連続の往路優勝がチラつく程になってきた。

4位に下がった中大・尾形選手はそこから22秒遅れに。どちらかというと上りが得意なのでそこで稼ぎたいというところだが、区間賞争い、そして往路優勝は若干厳しくなるか。そして、碓井さんが「脚にちょっと違和感がある」とのことが気になるが…。

その後ろ、5位でやってきた山学・横田選手が実はこの定点間トップ。区間順位も勝間選手に次いで2番目に挙がって来た。上田監督から「トラックよりロード派」と評されていましたが、やはり力強い走りとなっている。優勝争いではないのが惜しいところ。

6位以下は順位変動がまだまだ起こりそうな感じ。単独6位に日大・渡辺選手が拓大・高須選手を振り切って浮上。1年生がここでも非常にいい走りをしている。細身の体で山を駆け上がる。8位争いに順大・佐藤選手と専大・飯田選手が2人とも苦戦続きで通過。その直後に大東・松下選手が迫って来たのはびっくり!平地の借金を一気に返済しそうな勢いだ。

その後ろはやや差が離れてしまった中、14位関学・鈴木選手と15位帝京・小川選手が、この定点間それぞれ9番と11番と好走。それぞれの位置でしっかり走っているところ、しっかりと育成チームなのが垣間見えるところだ。

芦ノ湖20.7㎞-小涌園11.6㎞=9.1㎞

2位勝間信弥(神大1)30分36秒‹2›71分28秒①
4位足立康光(駒大4)31分49秒‹3›72分54秒②0:13
7位酒井秀行(早大3)32分32秒‹8›75分43秒③1:29
1位横田一仁(山学3)30分24秒‹1›71分25秒④1:35
10位尾方挙志(中大4)32分58秒‹7›74分14秒⑤2:44
3位渡辺尚幹(日大1)31分48秒‹6›73分53秒⑥4:23
6位松下泰平(大東3)32分03秒‹4›73分26秒⑦6:14
9位飯田茂雄(専大1)32分48秒‹11›76分20秒⑧6:41
14位高須則吉(拓大3)33分50秒‹10›75分59秒⑨6:51
11位佐藤功二(順大2)33分16秒‹14›77分13秒⑩7:06
13位古嵜英俊(東海2)33分21秒‹13›76分30秒⑪10:52
5位千原詩郎(東洋4)31分51秒‹5›73分44秒⑫11:17
8位佐藤洋平(日体1)32分38秒‹9›75分54秒⑬13:27
12位鈴木 朗(関学3)33分19秒‹12›76分21秒⑭16:16
15位小川直也(帝京1)34分13秒‹15›77分40秒⑮18:46

さあ、神大・勝間選手がじわじわ追い上げが始まる。13.6km地点で一気に早大・酒井選手を捉えて2位に浮上する。そして14.9km地点、カーブが多い中たまに1号車から2号車の影が見えるようになってくる。1分00秒差の差は確実に切っている。

一気に視界が開ける山頂付近、このときは15.5kmの芦之湯の定点ポイントは残っていないが、実況では36秒差とアナウンスがあった。200mならはっきりと勝間選手の眼に駒大・足立選手の姿が見えただろう。そして勝間選手が上り以上に得意な下りに入る。

記録保持者の小林さんは「下りはじめは、がひきちぎれてでも何がなんでも飛ばさなければならない、そうしないと切り替わらない」と解説された。その下り、切り替えたのはやはり勝間選手だった。17km過ぎに15秒差とアナウンスがあり、本当に一気に詰まり始めた。17-18kmは2分37秒!カーブでは外側に飛び出しそうな程の勢いがあり、上りを15km走った脚とは思えない走りだった。

その後ろではちょっとびっくりな出来事があった。18.6kmで山学・横田選手が、中大・緒方選手を交わして3位に浮上した映像だった。小涌園では、1分25秒差あったはず。横田選手は区間賞争いしているのですが、緒方選手も本調子とはいえない走りとなっているようだ。やはり5区は難しいところだ。

その5区、ついに2度目の首位交代が訪れた。19.5kmついに神大・勝間選手が駒大・足立選手を捉えた。そして前に出る。ここまで初の横路優勝を目指してトップを守ってきた足立選手ですが、ついていく余力は無く、じりじりと引き離されていく。山の名手が卒業した神大が、それ以上に逞しい選手を見つけ、往路2連覇をたぐり寄せた。

かくして、最後まで勢い衰えなかった神大・勝間選手がガッツポーズで往路2連覇のゴールテープを切った。タイムも1:11:28は当時の歴代3位に相当し、1年生で最も早い記録だそうだ。遅れながらも最後の最後で勝ち取る、優勝候補最右翼に上がっていた強さだ。

そして僅か12秒後に駒大・足立選手がゴール。課題の後半の失速があったかと思われたが、小涌園以降も4番目のタイムでは、相手を賞賛するしか無い。なお、駒大の往路2位は12年ぶりの最高タイ記録、大八木コーチ(当時)が箱根2区区間賞を獲得した時まで遡る。また、往路1位と2位の12秒差は過去最少タイ。なかなかの記録づくめだ。

この記録の中ですぐに更新されたのがあるが、歴代3位の記録だ。3位早大にあと僅かまで追い上げた山学・横田選手の個人記録が1:11:25!こちらが歴代3位で、74回5区区間賞となった。なお、早大は1分29秒差、山学は1分35秒差。往路4位までもかなりの僅差といえるもので、復路の激戦が予想された。

このあと中大・緒方選手がラスト3kmで1分以上離されてやってきた。最後の直線で少しよろける動作があり、ゴール直後に倒れ込んでしまった。個人タイム74分台は前回の突風の向かい風の時よりも悪い。4回目と言えでも僅かな狂いで、苦しくなってしまうのが恐ろしいところだ。そんな中、8年連続の往路5位以内、なんとか復路に向けて切り替えられる差で止まった。

6位はびっくりした。日大・渡辺選手が軽快な走りでやってきた。小涌園からはなんと3番目にいいタイム!後ろは混戦だったはずだが、全く見えない。予選最下位からの逆襲を狙う日大に、山の名手が現れた。今回の5区は1年生が目立っている。

そこから2分近く遅れて7位から10位が混戦でやってきた。上がってきたのはなんと大東・松下選手、かなり差がある10位だったはずだが、さすが山の大東大、一気に息を吹き返してきた。

8位は終盤頑張った専大・飯田選手、このままシード権に残れるかどうか。9位は最後に苦しくなった拓大・高須選手がゴール。それでも久々のシード権が狙えるところだ。10位は最後までペースがあがらなかった順大・佐藤選手。区間14位はちょっと外してしまったか。戦力はあるほうですが、6区が大事になる。

ここまで7分06秒差だったが、11位以降は大きく離れてしまい、復路一斉スタートに。11位は東海・古嵜選手。経験者だったが、残念ながら区間順位を落としてしまた。直後に追い上げた東洋・千原選手が区間5位の好走。それでもシード権まで4分半以上の差があり、序盤の出遅れが痛い展開だ。

13位は日体・佐藤選手。東洋と同時スタートだったが、千原選手相手では厳しかたか。終盤はあげたものの、前と2分10秒離れた。そこから2分50秒程遅れて14位関学・鈴木選手。4年ぶり2回目の出場、まだまだ厳しい往路となった。

最後にやってきたのは帝京・小川選手。高校1年生までサッカー少年、そこから先生の誘いもあり転向したそうだが、まさか1年目で箱根の山登りとは思わなかっただろう。最後は苦しくなり最終的に区間最下位となったが、しっかりと芦ノ湖まで襷を運んだ。トップとは18分46秒差だった。


往路はここ最近は1つのチームがダントツで優勝する展開が続いていましたが、この年は最後まで順位が分からない展開に。多くのチームが強化に本腰を入れてきた証だろう。復路も神大が突っ走るのかどうか、その一点が注目を集めることとなった。