第95回箱根駅伝10区です
第95回記念大会も最終局面。
地元東海大悲願の初優勝、
負けてなお強しの青学と東洋
久々シード権、連続シード権、
伝統校の最後の意地、盛りだくさんです。
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ビクトリーロードとなりそうな東海大は、3年郡司選手に。今シーズンロード頼れるランナーだ。東洋は初駅伝の大澤選手、青学大は主力選手の鈴木選手でどこまで追い上げることができるか。
この他、現時点でシード権内にいる大学では、駒大・法大・國學・順大が安定感のある上級生、帝京・中学・拓大は勢いのある2年生に任せたのはまた一つ見どころ。
追いかける立場の中では、明大4年坂口選手が最も注目。早大・小澤選手も同じく4年生。中大は勢いある若手、日体大は前回の好走が記憶にある中川選手でどうなるか。
他、復路はここまで健闘の連合チームや他に最後に意地を見せる選手が下位から出てくるかどうかも注目されました。
蒲田5.9㎞
83回松瀬(順大)17分27秒
まずは実力者の動向が気になったのですよね。エース区間でもやれる青学鈴木選手が、2㎞過ぎに東洋大澤選手を捉えて2位に浮上。大澤選手も追いすがろうとするも、5㎞までには完全に突き放していました。
東海大の強さに隠れていましたが、これ自体は本当にすごい。芦ノ湖でついていた5分30秒差を、ここでついにひっくり返したということだ。”平成の大逆転”はここまできた。ただ、東海大の4分少しの差がまだ3分以上残っている。これ自体は東海大が強いという他ないだろう。
鈴木選手は、この時点で松瀬選手の区間記録を13秒も上回るペース。区間新での区間賞と復路優勝を確実なものにするためにぶっ飛ばしていく。
もう一人の実力者明大坂口選手にもカメラがついていました。インカレで表彰台に立つなどの能力がある選手ですが、血液系の病気で頭痛などの症状と戦いながらの4年間でした。
その集大成の箱根駅伝。10位が見える位置での11位で襷を受け、一気に追い上げるかと思われましたが、そうでもなかった。1㎞3分01秒はともかく、3㎞9分15秒は実力からするとやはりスロー。
そうこうしているうちに、後ろが一気に追い上げてきた。12位を争っている早大小澤&中大川崎選手が、神大佐久間選手を引き連れながらやってきた。42秒あった差が蒲田で約2秒、この直後に追い抜いて行った。
早大や中大としてはもう行くしかない状況で、定点間3番4番と突っ込んでいた。坂口選手は22番目の通過。これより下はもともと調整不良の情報があった連合亜大米井選手くらい。この2選手には何とか食らいつこうとする意思は見られたが、表情が苦しそうなのが気がかりだった。
なお10位拓大松岡選手はとは、蒲田の地点で55秒差。シード権獲得を考えると、次の新八ッ山橋までにしっかり視界に捉えたい。勝負の前半となっています。
新八ッ山橋13.3㎞-蒲田5.9㎞=7.4㎞
83回松瀬(順大)22分22秒(39分49秒)
青学鈴木選手は7㎞を70分27秒で通過、この時点で区間記録を16秒。東海郡司選手はテレビ画面上で10㎞30分10秒を切るくらいで通過。郡司選手がほぼ1㎞3分をキープする見事なペース配分だ。
突っ込んだ鈴木選手がもう少し詰めるかと思われましたが、新八ッ山橋では詰めたのは3秒のみ。区間記録のリードも6秒に減っていました。疲れもあるでしょうが、10㎞付近から向かい風が強くなってきたそうで。追いかけるのが厳しくなる展開になりそうだ。
さて、下級生の中で最も注目が集まっていたのは帝京の2年星選手。上尾ハーフ62分台をマークし、一気に走力が上がっているのを示していた。中継所で47秒あった國學小中選手は既に捉えており、新八ッ山橋では、法大鈴木選手の49秒後ろにまで迫っていた。
この定点間は、青学鈴木や東海郡司選手を上回り、全ランナートップのタイム。ギアを最大限に上げてきた。逃げる法大鈴木選手は最初で最後の箱根路。この定点間は4番目のタイムで飛ばしているほうだろう。4強の次の順位争いも気になるところだ。
風が出てきたと聞いて気になったのがシード権争い。出来るだけ風が出る前に、早大中大は、拓大松岡選手を視界に捉えたいところでしたが、果たして4号車のカメラには順調に走る松岡選手の後ろ、見えては来ない状況だった。
それもそのはず、松岡選手はこの定点間7番目のタイムと順調に推移。テレビではしきりに1万m持ちタイムが最下位ということを何度も繰り返していましたが、昨年11月の上尾ハーフでは早大小澤選手63分42秒に対し、松岡選手は63分45秒。ハッキリ言って実力差はないのである。
10㎞で今大会の指揮官で最高齢73歳となる岡田監督から「打合せ通りの走りをしような」という非常に不気味な声掛け。まさに秘密兵器といったところか。
新八ッ山橋では9位中学石綿選手をじりじり追い詰めていた。早大小澤中大川崎選手は僅かに詰めるもののまだ52秒差。これはどうやら決まりそうな雰囲気だろうか。
後ろ明大坂口選手はやはり離れ、新八ッ山橋の定点直前で神大佐久間選手にも振り切られて厳しくなった。その直後に来た日体中川選手も、昨年のような勢いは見られず、4大会連続のシード権は難しくなってきた。
田町16.5㎞-新八ッ山橋13.3㎞=3.2㎞
83回松瀬(順大)9分20秒(49分08秒)
東海郡司選手がここで初めて定点間トップ!しっかりとペースメイクしてきたのがここで活きた。郡司選手は昨年8区出走する気満々も当日変更。両角監督から「使わなくてよかった」ということも言われ、悔しさをもって1年間向上。これだけの選手になっています。
監督からは直後の18㎞地点で「風のことを考えて走れよ」とのこと。しっかり、最後の締めに向けて盤石の態勢だ。
他上位では、4位駒大下選手が定点間6位。定点間ではここが一番良かったです。高校時代ほどの活躍ができず、特にこの1年は苦しんだ年になりましたが、何とか最後のフィニッシュを締めくくろうという走りになっています。
シード権は、順番はともかく、シード校はほぼ決まった感じでした。9位中学石綿選手が定点間6位、10位拓大松岡選手は定点間4位とまだまだペースを保っています。
追う中大川崎早大小澤選手はついに彼らより遅いペースとなってしまい、1分以上の差に再び押し戻されてしまった格好だ。万事休すといったところか。
御成門18.1km-田町16.5㎞=1.6㎞
83回松瀬(順大)5分02秒(54分10秒)
新八ッ山橋あたりから白熱していた日大金子&大東中神選手の16番争いに動きが。日大金子選手がスパートをかけたようで、突き放した。この定点間4番目。前に大きな失速が始まった明大坂口選手も近づいてきたようで、このあたりいい目標となっていたでしょうか。
そういえば、学連亜大米井選手や東国内山選手を、いつのまにか交わしていた。このあたり伝統校のアンカーとしての意地もあったでしょうか。
その東国大らを僅か10秒差まで追い上げていたのが城西大里選手。繰り上げ4校の中で、蒲田の地点で既に単独で抜け出していましたが、しり上がりに順位をアップ。この定点間は3番目に早いタイムで駆け抜けています。城西ついに快走する選手が現れました。
そして繰り上げ組2番目のいいのが山学片山選手。前回も同区間出走し、今回は4年生集大成。中盤から抜け出してしっかりペースをキープ。この定点間は8番目の好走だ。
後ろ国士加藤選手は実績的に厳しかったか、少しずつペースダウン中。関東ICハーフ入賞の上武大森選手が厳しい走りで、国士よりも1分以上後ろ。万全ならアンカー起用ではなかっただろう選手ですが、復路は本当に厳しくなっています。
馬場先門20.1㎞-御成門18.1㎞=2.0㎞
83回松瀬(順大)6分17秒(60分27秒)
3分10秒程だった1位東海郡司、2位青学鈴木選手の差が一気に開き、3分45秒に。鈴木選手がこの定点間19番目とかなりペースを落としていますね。ちょっと気になったのですが、もしかすると最後しっかりゴールする為に溜めていたかもしれません。
そしてついに帝京星選手が区間トップのタイムに!田町以降は連続で定点間トップのタイムで推移、20.1㎞を唯一人60分台で走破しています。そして瞬く間に法大鈴木選手を交わして総合5位に浮上!
御成門で4秒差まで追い上げていましたが、そこから2.0㎞で交わして17秒も差をつけるのですから、本当に凄いペースです。瞬く間にという表現が的確なのではと感じます。次回以降本当に楽しみな選手です。
そしてここに来て9位争いが熱くなっていたのですよね。18.1㎞地点で拓大松岡選手が中学石綿選手に追い付いて並走。20.0㎞地点では松岡選手が突き放して単独9位…だったのですが、
この定点直前で石綿選手が猛ダッシュ!一気に松岡選手に追い付いて再び並走となったところで定点。中々の戦いとなった。
中学川崎監督は、この10区は、向かい風の中でダッシュができる選手を起用するそう。前回の中学VS順大のシード権争いでも、終盤で曲がり角直後にダッシュを繰り返して、逃げ切る作戦勝ちもしていたそうで。
今回は、まず拓大にくらいつくということでの作戦となった。そしてどうやら全日本大学駅伝出場権推薦校の枠が掛かっていたようなので、ここも負けられない戦いとなってきています。
大手町23.0㎞-馬場先門20.1㎞=2.9㎞
83回松瀬(順大)8分32秒(68分59秒)
「残り3㎞だぞ いいか今までやってきた練習を思い出せ」の両角監督の言葉を受け、郡司選手が突き進む。さすがに表情が厳しくなってきたが、力強いフォームは変わらなかった。
そしてついに優勝のゴールテープへ。創部59年目、初出場から46年目、平塚市内にキャンパスがある東海大が、ついに総合優勝のゴールテープを切った。速さを強さへ、ついに融合した瞬間だった。
そこから3分41秒遅れて、5連覇夢散った青学鈴木選手がゴール。それでも優勝時や初出場時と変わらない笑顔でのゴールテープ。これが青学大チームのスタイルだ。ラスト3㎞は鈴木選手が定点間トップ!最後しっかりと締め、次年度へ向けて勢いをつける格好となった。
3位は東洋大澤選手がやってきた。トップからは5分54秒、2位からも2分以上離れてしまい、最後は力尽きた格好だった。それでも2年連続往路優勝、3位以内は今年も確保した。
4位には駒大下選手。3位とは3分の差。下選手もラスト3㎞はちょっと苦しく区間一桁とはいかず。調子は上がっていなかったそうなので、ここは大八木監督の情も入ったでしょうか。それでもひとまず予選から4位となったのはほっとしたところでしょうか。
そして5位には、今年は選手層の厚さを見せた帝京大。往路はやや誤算は出たが、復路は全て区間一桁。しかも9区で3位、10区星選手は区間賞に輝く活躍!なんと復路順位は3位だったそう。またいつか上位陣に一泡吹かせたい。
6位には法大鈴木選手。目標の5位確保と思われたが、帝京大に捲かれてしまった形に。ただチームとしては久しぶりに3年連続シード権確保。最後もしっかりと締めた。
嬉しいのは7位國學院。小中選手がしっかり繋ぎ、7年ぶりシード権獲得は往路3位、総合7位の大幅自己ベストでした。もっとも、往路3位だったのに、ということで欲が出てきたようで、これがチーム力向上に繋がればと思います。
残りシード枠が3枠となりました。8位順大鈴木・9位拓大松岡・10位中学石綿選手の成績に注目で、ラスト3㎞は7番目、5番目、8番目。しっかりと最後に余力を残す走りをしていました。これでは、後ろは追い切れないですね。
順大としては、昨年の悔しい14秒差シード落ちをひとまず返上出来てほっとするところ。拓大は出雲駅伝程の旋風とはならずも、拓大史上初の2年連続シード権確保。岡田監督が一つ拓大を一つ上のレベルに引き上げたところだ。
中央学院大にいたっては初の5年連続シード権確保だ。ここ数年目標に掲げていた5位に中々到達できないこと、拓大に抜かれなければ全日本駅伝の推薦をゲットできていたので悔しさもかなりですが、故障者も多い中ほっとしたとも。”しぶとさ”も駅伝ファンに強く印象づいているはずです。
11位と12位は中大川崎、早大小澤選手の伝統校が最後まで争った。終盤は終始川崎選手が数秒リードする展開。残り1㎞切ってから小澤選手が少しずつ詰めると、残り100mでスパート!残り50mで逆転した!
これに気づいた川崎選手が猛スパート!伝統校同士意地のバトルに大声援が送られる中、川崎選手が僅かに刺し返して11位でゴール。最初の2区間でトップ争い、その後シード外に落ちた中、チーム力が戻りつつあることは証明して見せた。
12位となった早大は13年ぶりにシード権喪失と悔しい結果に。最終的に選手層はまずまずだったが、エース区間の2区と山登りの5区が戦えなかったことが最後まで響いてしまった。両校ともシード権へあと1分16秒だった。
13位日体中川選手はその1分半あと。区間により少し凸凹があったことで、4年連続シード権とはいかなかった印象。中川選手も本来の走りといかなかった。その次は14番目神大佐久間選手。復路は戦えたが5区が鬼門になりつつある。
このあと選手が続々とやってくる。大東中神選手が15番目でゴールテープへ。1区でアクシデントがあった中、最後までしっかり駅伝で戦い切ったと言える。3年ぶり箱根の中神選手が最後の3㎞は6番目のタイムで締めた。
16番目は、鶴見繰り上げ最上位の城西大里選手。つまり見た目4つ順位をあげたことになる。ちょっと予想できない程全体的に苦戦となった中、大里選手の区間4位は来季への光となるはずだ。
17番目は日大金子選手。一時浮上したが少しスパートが早かったか。それでも日大全体としては4区以降粘って戦い抜いたのが印象的。そこから少し遅れて2
チーム。初めて一本でタスキを繋いだ東国大、内山選手が18番目。次はシード争いだ。
19番目は学生連合チーム。往路は力負けしたものの、5区から流れが変わり、復路は途中まで12番目を争うチームに食らいつく健闘を見せていた。復路は全員4年生の意地は見せた。絶不調だったがアンカー亜大米井選手が懸命にゴールテープを駆け抜けた。
20番目山学片山選手。予選10位通過からニャイロ選手が抜け、非常に厳しい箱根路になった。片山選手の区間14位が個人での最高位だった。続いて21番目は国士加藤選手。2区でトップ通過が話題になったが、チーム力としてはまだまだだった。
さて驚いた。11位スタートした明大坂口選手がなんと22番目まで落ちてしまっていた。最後の定点2.9㎞は12分かかっていて1㎞4分以上かかった計算だ。低血糖のような症状、とのことでしたが、最後まで箱根で好成績を残すことはできなかった。上り調子のチームなので、来期巻き返したい。
ここで総合では14位日大、15位東国、16位神大、17位明大、18位国士、19位大東、20位城西、OP連合、21位山学大が確定。東国大は過去最高位、明大は10区で6つ順位を落とした。
最後にやってきたのは上武大森選手。力ある選手ですが、万全ではなかった中、脱水気味にもなったようで、23番目のゴール。チームも2年連続最下位。近藤監督「厳しいを通り越して苦しい」成績だった。連続出場を続ける上武に上昇機運は訪れるのでしょうか。
終わってみれば、
往路は東洋大、復路は青山学院大、総合は東海大
と”3強”が一つずつ獲る形に。
それぞれ優勝校が違うのは、13年ぶり。
ただ、荒れた大会と言う印象はなく、それぞれある程度力を出し切った中、
とても見応えがある大会だったと思います。
また、往路上位10校がそのままシード権を獲得。
これは86回大会以来9年ぶり。どのチームも高速で
繰り上げも最近では少ない4校と小差の争いだった中、
結構意外でしたね。
箱根駅伝の歴史は、戦時中の中止期間を含めて100年になってきますが、
平均視聴率30%超え、ますます盛り上がってきてます!