第95回箱根駅伝8区です。
大きく動いたトップ争い、鮮やかな区間新記録、
僅差で単独走のシード権争い、繰り上げなど、動きがまだまだありました。
ページコンテンツ
わずか4秒の差でトップの東洋はルーキー鈴木選手に5年ぶり優勝を、追う東海大は絶好調で初駅伝に選ばれた小松選手に初優勝を託す。青学大はルーキー飯田選手の大学駅伝デビュー戦に。駒大は3度目の箱根になる伊勢選手に託します。
シード権争いは上級生。9位拓大白髪、11位明大角出選手は共に4年生。間10位の中学は選出やや予想外の大濱選手起用がどう出るか。少し詰め寄った12位争いもまだまだ激しそうだった。
なお、東洋と青学以外にも1年生が結構多く、法大鎌田と國學殿地選手の5位争い、12番手争いの早大太田、大東片根、神大安田選手も1年生。誰が遊行寺の坂を攻略できるか気になるところだ。
茅ヶ崎6.7㎞
92回下田(青学)19分49秒
僅か4秒の差。スピードに勝る東海小松選手が、両角監督の「まずはスーッと後ろにつけ」の指示の元、0.3㎞で追いつくと、真後ろにピタリついた。その後は東洋鈴木選手が前、小松選手が斜め後ろの状態のままずっとレースが続く。1年生がずっと3年生を引っ張っていた。
この展開に酒井監督が、5㎞地点で「このままじゃ使われるから、すっとペースをあげてごらん」と指示。数m差ついたものの、直に追いつかれました。小松選手が徹底的に勝負に徹していた展開です。
最も、小松選手は、鈴木選手と関東IC・上尾ハーフと接戦。ともに僅差で負けたため、よく覚えていて、同等以上の選手とみていたようです。実際、定点通過は3番4番通過、全く牽制にはなっていない。すぐに前に出ないのは得策だったと思います。
その彼らを上回ったのが3位4位通過の青学飯田、駒大伊勢選手。それぞれ単独走ながら実力者です。特に飯田選手は1年生ながら、先輩の下田選手の記録とほぼ同じペースで推移。自信を持って攻めている印象です。
また、シード権争いはそれぞれ早い入りに。この区間2年連続の拓大白髪選手が6番目のタイムで通過、大学駅伝初出場の中学大濱選手が5番目のタイム通過、いぶし銀言われていた明大角出選手が8番目のタイム。それぞれシード権獲得を目指して前を追った展開です。
逆にゆったりだったのが3㎞で既に8人の大集団となった12番通過。比較的に前にいた神大安藤、早大太田選手は1年生、日大松木選手はスタミナ型のランナーとあっては、やはりこういう展開となってしまうか。なお、追いついた選手もそこまでハイペースというわけではなく、シード権との差は一気に2分半へ。前半のペースの違いがどうなるか、非常に気になるところでした。
他では、20番目を走っている国士藤江選手、山学山田選手が早めの入り。藤江選手は過去2度往路を経験している選手なだけにポイントとしたいところ。山田選手は準部員からの出世で話題になった選手ですが、まずは前見えるだろう国士舘目指して突っ込んだ感じでしょうか。それぞれの位置での走りが気になった。
遊行寺坂15.6㎞-茅ヶ崎6.7㎞=8.9㎞
92回下田(青学)26分33秒(46分22秒)
細かい駆け引きはあった。6.9㎞地点で小松選手が横に出て、鈴木選手の顔色をうかがう様子、7.6㎞では鈴木選手が蛇行して並走を嫌うシーンもあったが、概ね鈴木選手が引っ張り続ける展開だ。
10㎞は29分50秒前後で通過、両角監督は「(相手に聞こえるから)指示は出せないからな」酒井監督は「28分35秒持ってる選手をしっかりリードしてるからいい調子だぞ」という声掛け。
酒井監督が、『後ろで休め』と言わないところは、東洋大らしいといったところ。『怯まず前へ』のスローガン通りなのか、1年生ながら一人でも走れる鈴木選手の適性を見たか、牽制で後ろの青学大を調子づかせないようにしたか…。このあたり、本心が駅伝ファンとしてちょっと気になってしまいます。
13㎞を過ぎてあたりから、徐々に解説陣がじれ始め、夏に捻挫しているため自信がないのかもしれないというコメントも出始めたところでした。14.2㎞で時折見られていた横に出るだけでなく。14.3㎞下りで初めて少し前に出ました。ただ、またすぐ後ろに下がり、テレビ画面が法大鎌田、國學殿地選手の5位争いに切り替えた時だった。
14.6㎞一気に小松選手がペースアップ。14.8㎞で10m差、付いていこうとする鈴木選手ですが、徐々に顎が上がり始めた。15.5㎞では20m以上にその差が広がった。そして本格的な遊行寺坂にかかり始めた15.6㎞を過ぎてから急激に差が広がり50m程に。リズムに乗った走りで小松選手が一気に先手を奪っていく展開だ。85回大会以来10年ぶり、10度目の首位交代は、とても鮮やかに行われました。
ここは本当はもう少しテレビで見たかった場面。5位の法大と國學院のルーキー対決が面白かったのだ。法大鎌田選手は、全日本で早くも起用されるなどロードで非常に期待が高い選手。3年時都道府県対抗駅伝5区3位の走りもありました。
一方國學殿地選手も負けてない。高校時代の5000mの持ちタイムは14分45秒ですが、彼も3年時都道府県対抗駅伝の5区に登場し、5区12位だった選手。ロードでの秘密兵器となっていたようです。先に飛び出した鎌田選手を、殿地選手が必死に食らいつく様子が遊行寺坂印象的でした。
その後ろ、帝京鳥飼選手もまずまずのペース。単独走ながら中々。8位順大金原選手は少し離れてしまったが、4年生らしく堅実な走りをキープしている感じでした。
シード権争いは少し動きが。序盤早かった3人ですが、早いペースをキープしているのが中学大濱選手。30秒近くあった9位拓大白髪選手を一気に追いつき、9位争いへ。
また11位明大角出選手もだいぶ引き離した模様でした。14.4㎞地点でバイクカメラがついたところ、息切れかやや苦しい表情で走っていたのが印象的。1分以上の差となりましたが、ここから粘りを見せることができるか注目でした。
影取18.4㎞-遊行寺坂15.6㎞=2.8㎞
73回古田(山学)?(54分41秒)、92回下田(青学)8分49秒(55分11秒)
本当に遊行坂を挟む2.8㎞で一気に広がりましたね。伸びやかなストライドで、それほど苦しさはまだ見られず、遊行寺坂以降もしっかりペースをキープ。18㎞地点から両角監督からは「ぐいぐいいくぞ」と言う言葉。まだまだいけそうな感じでした。
東洋鈴木選手は完全に息切れ。ずっと引っ張って疲れも見え始めた中、遊行寺坂手前でさらにペースアップ。本格的な遊行寺坂に入ってからはペースを保つのはきつ過ぎた。こう思うと小松選手のスパートのタイミングが完璧でした。
なお、チラリと画面に映りましたが、73回大会古田選手の影取通過が54分54秒、小松選手はそこから10秒遅れるだけ…後半に余力を残したレース展開の中、区間記録更新までも見えてきていました。
遊行寺坂以降では余力が残っているだろう選手が多かった12位集団が定点間上位をかなりの選手が通過していますね。早スポでは遊行寺坂が終わるタイミングで早大太田選手が主導権を握っていたそうですね。これに東国山瀬、日大松木、中大矢野、連合平国鈴木選手が反応。5人の集団となっていました。
落ちたのは日体森田、神大安田、大東片根選手。片根選手は失速が大きく、37秒もの差を付けられてしまいました。1週間前までは、最終的に5区を出走した佐藤選手が走る予定。急な出番となりましたが、やや苦しい箱根路になりそうでした。
戸塚中継所21.4km-影取18.4km=3.0㎞
73回古田(山学)9分23秒(64分05秒)、92回下田(青学)9分10秒(64分21秒)
さて、東海小松選手だ。後ろ東洋との差が次第に開いていき、興味はいよいよ区間記録が出るか否かに映っていた。残り1㎞さすがに険しくなった表情でスパート!両角監督からは「区間記録が出るぞ」と声がかけられていました。
最も8区の記録は22年前の記録、小松選手の生まれた年の記録、そして何分何秒が区間記録かもよく知らない、監督の言葉は「鼓舞させるための嘘」と思っていたそうだが…。かくして、過去の箱根は15年前の2位が最高のチームが、初の8区戸塚首位リレー。
それと同時に1時間3分49秒の区間新記録が達成!そういえば前回は7区で当時3年で初の大学駅伝だった青学林選手が区間記録、そいてMVP獲得となりましたが…、これまた3年で初の大学駅伝だった東海小松選手が区間記録、のちにMVP獲得とも発表されましたが、偶然ではないでしょうね。
ここまで良かったのは、①勿論小松選手が絶好調だったこと。11月からはポイント練習全く外さなかったそうですね。②気象条件がいい。これも8区は相当左右されるので良かったです。
そして展開、③ハイペースでの並走、これは大きなポイントだったかもです。8区は単独走が多く、自分でペースを作る必要性が大きいのですがスタートから3分の2並走。④スピードのある小松選手が遊行寺坂まで脚を溜められたこと、いろんな要因が積み重なり、小松選手がヒーローになったわけですね。
ただ、優勝争いは東洋はまだあわよくばという差だった。あの勢いだと1分は付きそうだった東洋鈴木選手は、51秒差と粘った。遊行寺~影取の2.8㎞で27秒開いたのに、影取から中継所の3㎞は13秒しか負けていない。最後持ち直すところ、並の1年生ではなかった印象です。
そして3位でやってきた青学飯田選手もそう。この2人が64分台で区間2位3位。将来有望ですよ。ただ、厳しい優勝戦線ではこれでも負けになってしまうタイムだった。飯田選手は10㎞29分26秒のハイペースで通過後粘りに粘ったが、トップとの差は4分29秒差と押し戻された。実質ここで総合5連覇の夢はほぼ潰えた格好に。いずれ悔しさを晴らす場面があればと思う。
最後まとめたのは駒大伊勢選手。完全に単独走となったものの、最後の定点間は2番目の走り。上位4人は64分台以内でまとめた計算。区間5位以降は66分以上かかっている。ここはさすが”4強”だった。駒大は伊勢選手の走りで”3強”入りに1分00秒差につけました。伊勢選手含め最後3区間4年生でどこまでいけるか注目でした。
5位争いは終盤に法大鎌田選手が國學殿地選手を突き放して制しましたね。非常にいい争いでした。7位以降も大きく後ろに。2分離れて帝京鳥飼選手、そこから1分後ろ順大金原選手となりました。さすがに単独走が増えてきている中、このあたりしっかりペースを保っています。
その後ろ1分からがシード権争い。中学大濱選手が遊行寺坂以降も粘って、拓大白髪選手を突き放し、全体の区間5位で走破!8区は川崎監督がギリギリまで別の選手と悩んでいたそうで、予想外の好成績だった模様。こういうところが中学大のしぶとさだ。
10位に下がった拓大白髪選手は後半はややペースダウン。区間14位は昨年より良かったですが、もう少し行きたかったかな?最も、後ろ11位明大角出選手も区間17位で後半は我慢する展開。1分06秒差という微妙な差で長丁場の9区へ突入する。
後ろの12位集団も直にやってきて、激しい争いの中、東国山瀬選手が制しました。箱根予選で急浮上した選手でしたが、箱根でも区間6位はしっかり走りました。明らかに今までとは一つ上のレベルの戦いに。
また、連合の平国鈴木選手も区間7位相当の走り。陸マガ2月号では、高校時代の5000mの持ちタイムから、最も伸びたと言える選手に、選ばれていました。箱根でも結果を残したところがポイントですね。連合が久しぶりに中位で活躍しています。
実質の順位争いで見ると。12位早大太田、13位中大矢野、14位日大松木選手まではほぼ横一線。多少遅れた日体森田選手もまだ見える範囲で、12位まではすぐ追いつける位置に。シードは厳しい神大安田、大東片根選手もまだある程度食いついていて、彼らを利用して少しでもまだ一つでも上にいこうというところだ。
ここまで19チーム通過で、残り4チーム。2分以上離れてしまった。繰り上げの時間も迫ってきていましたが、残り2分を切ってから国士藤江選手、残り1分を切ってから山学山田選手が辛くもリレー。国士舘は過去2年よりはいい、山学も復路は少しもがきが効いている感じでしょうか。
そのあとが開いてしまいました。城西大石選手が遠くに見え始めたところ、もう繰り上げまで残り時間が僅かになった。残念ながら間に合わず、9区走者がスタートを切った。その49秒後に大石選手が戸塚到着となった。区間21位は本来の力は程遠い。実は前回も8区出走、この時は上位集団の流れの中で区間4位の好走を見せていたのですが…。流れは怖い。
ここから1分以上遅れて、上武岩崎選手が到着。区間最下位の悔しい走りに。なお、この間に山学大に総合で交わされて最下位に。2年連続最下位は回避したいところ、残り2区間4年生に託します。
東海大終盤に差し掛かるところ、ついにトップ!次の区間で一気に畳みかけられるかどうか。まだどう転ぶかわからない9位から14位付近のシード権争い、繰り上げをめぐるドラマなどまだまだ見逃せない展開が続きます。