少し遅くなりましたが、
各大学の大学駅伝2019-2020シーズンの振り返りと、卒業生の特集を行っていきます。
まずは、箱根駅伝で見事な復活V、青山学院大学です。
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1区(8.0㎞)7位湯原慶吾②24分35秒[7]1分28秒差
2区(5.8㎞)1位岸本大紀①16分16秒[4]13秒差
3区(8.5㎞)4位吉田圭太③23分58秒[4]6秒差
4区(6.2㎞)1位神林勇太③17分24秒[2]0秒差
5区(6.4㎞)6位竹石尚人④18分36秒[3]33秒差
6区(10.2㎞)5位中村友哉④30分02秒[5]53秒差
原監督が戦前「1位から5位まである」と語っていた初戦。大学駅伝初出場となった湯原・岸本選手が、しっかりと滑り出すと、エース区間に入った吉田選手も他校の主力と戦います。2年ぶり三大駅伝参戦となった神林選手が区間賞で、トップタイ。しっかり優勝争いに向けて流れを作ります。
ただ、この時は5区6区に入った竹石・中村選手の4年生選手が中盤に並走していた選手から引き離されてしまい、最終的に5位にとどまりました。鈴木主将が不調で起用できなかったのも響きました。
1区(9.5㎞)7位湯原慶吾②28分07秒[7]0:18
2区(11.1㎞)5位岸本大紀①31分51秒[5]0:21
3区(11.9㎞)9位神林勇太③34分27秒[7]1:07
4区(11.8㎞)7位鈴木塁人④34分37秒[8]1:37
5区(12.4㎞)3位吉田祐也④36分32秒[7]1:00
6区(12.8㎞)2位中村友哉④37分29秒[3]1:03
7区(17.6㎞)2位吉田圭太③52分09秒[1]
8区(19.7㎞)7位飯田貴之②59分32秒[2]1:44
1区湯原2区岸本3区神林選手を終えて総合7位、少し調子が上向いたという鈴木選手を4区起用も一つ順位を落として8位。出雲よりも厳し戦いになるかと思われました。
ここで5区吉田祐が区間3位、6区中村友選手が区間2位、4年生が好走し一気に3位にまで浮上、追撃態勢を整えます。ポイントとして起用された吉田圭選手がトップに追い付き、ラストスパートで秒差のトップに立ちます。
ただ、アンカーに起用された2年飯田選手、長い距離しっかりまとめますが、競っていたチームに逆転を許してしまい、悔しい総合2位に。ただ、出雲からはしっかり戦った印象です。
1区(21.3㎞)7位吉田圭太③61分31[7]0:18
2区(23.1㎞)5位岸本大紀①67分03秒[1]
3区(21.4㎞)4位鈴木塁人④61分32秒[2]1:21
4区(20.9㎞)1位吉田祐也④60分30秒[1]
5区(20.8㎞)2位飯田貴之②70分40秒[1]
6区(20.8㎞)3位谷野航平④58分18秒[1]
7区(21.3㎞)4位中村友哉④63分23秒[1]
8区(21.4㎞)2位岩見秀哉③64分25秒[1]
9区(23.1㎞)1位神林勇太③68分13秒[1]
10区(23.0㎞)5位湯原慶吾②69分48秒[1]
この後の記録会、ヴェイパーフライを解禁したこともあり、質・量ともに大学駅伝界屈指の練習メニューを組んでいた青学大の走力が爆発。鈴木主将の調子も上がり、自信を深めて、王座奪還を狙いに行った葉声ネキ電2020になります。
1区吉田圭選手…エース級の吉田圭選手の1区投入はびっくりした駅伝ファンも多かったですが、結果的に陰のMVPにあげるかたも多いですね。区間7位ですが、想像以上のハイペースの展開に、他有力校も遅れる中、トップと18秒差で留めたのは流れを作ったと言えます。個人としては来年こそ区間賞かな?
2区岸本選手…自分としては彼がMVPかな。いい意味での最初の”まさか”でした。記録会や前哨戦でレベル高く非常に冷静な走りが目立っていました。それでも、ルーキー、ハーフマラソンの実践経験は実質無。他校の主力に対してどのくらいの差で凌ぐかというのが多くの駅伝ファンが気になった点です。
それがまさか6人抜きでトップに立つ走りをするとは全く予想できませんでした。ルーキーでこれだけ集団の中うまく走って、個人タイムも67分03秒と凄まじい記録でした。本人は「66分台惜しかったー」と飄々としているという…。何はともあれ、彼の好走で、攻めていく青学スタイルで突き抜けていく事になります。
3区鈴木選手…今シーズンは不調に喘いでいた鈴木主将、それでも11月あたりから復調の兆しを掴んで、自信をもって往路3区へ。前半から攻めていき1万m27分台で通過!他校の留学生にはさすがに首位は譲りましたが、他ライバルチームには競り勝って、しっかりと役割を果たします。
4区吉田祐選手…次にまた”まさか”が起こります。4年生箱根駅伝初出場の吉田祐選手。ロードが得意な選手でしたが、2年連続11番手で出場を逃し続けていました。悔しさを糧に、豊富な練習量を誇っていた吉田祐選手の蓄えていた力が爆発します。
約1分半あったトップとの差をどんどん追い上げると、中盤過ぎに捉え、1分以上後方に置き去りにします。タイムも予期していなかった区間新記録。これで競技引退のはずが・・・色々と動きがありそうです。
5区飯田選手…2年連続山登りをしていた選手が怪我のため、10日のエントリーの段階で外れました。その時点で次の候補だった飯田選手に白羽の矢が立ちました。この飯田選手が”まさか”の走りでした。
元々長距離ロードの安定感はあるので、ある程度区間上位では走るだろうと予想は出来ました。それでも、70分台の区間新記録(区間2位)で、他エースを投入したチームの追随を全く許さなかったのは凄まじかった。見事な継走、往路優勝でした。
6区谷野選手…秋の記録会に全くエントリーされていない1500m表彰台選手ということで、コアなファンがクローズアップしていましたが、やはり山下りでした。中盤からリズムに乗ると、最終的に58分18秒区間3位の好タイム。まずはしっかりと滑り出しました。
7区中村選手…4年生最後の選手。高校時代13分台を出すも、苦しんだ4年間。最後に三大駅伝出走となりました。持っているスピードは存分に発揮した21.3㎞となりました。しっかりと後続2分以上の差を維持してのリレーです。
8区岩見選手…選手層が厚く、いい意味で最後の最後まで原監督が迷っていた区間。昨年4区で悔しい思いをした岩見選手のリベンジ走となりました。後方、前回大会MVPの選手が追い上げてきますが、ほとんど寄せ付けない快走でした。ここでかなり青学大の連覇が濃くなってきました。
9区神林選手…3年生になってついに出番が回って来た神林選手。かなり飛び跳ねるようなフォームながら、しっかりと23.1㎞の長い道のりに対応していたと思います。どの区間もそうですが、区間記録以上のペースで突っ込んでいき、トップに立って、なお攻める青学大のスタイルの象徴するような走りでした。
10区湯原選手…今年度になって、駅伝のレギュラーを掴んだスピードのある2年生。出雲・全日本共に1区だったのでやや驚きの起用でしたが、割とあっていましたかね。
青学大は岸本選手を初め、ルーキーの世代にかなり面白い人材がいます。前回大会で連覇は途切れましたが、またいずれ青学大の復活Vがあるなと思っていました。しかし、まさか今年一気に総合優勝するとは思いませんでした。
多くの卒業生が抜けて、出足は順調ではありませんでした。少なくとも7番手付近という印象。4年生の断捨離も行うなど、厳しい改革もありました。それでも秋、箱根が近づくにつれて上がって来たのは、さすが青学大長距離ブロックであり、原監督だなと思います。
次年度、エース区間2区や山登り5区など人材が残ったうえで、若手の強化が進んでいる青学大。現時点では、かなり明るい未来が予想付きますが、果たして…。
”最弱世代”など言われ、中々この1年間は原監督からも厳しい叱咤があった世代です。そんな中、”やっぱり強かった”と言わしめるまで成長した4年生を送りましょう!
※関東インカレは2部
名前5千ベスト/1万ベスト/ハーフベスト
各学年成績
鈴木塁人13分53秒20/28分31秒66/61分45秒
高3:5千14分12秒31/全国1区16位、高校1区12位、国体5千10位、IH5千17位
1年:箱根補欠、全日本補欠、出雲1区5位/関東IC5千3位
2年:箱根1区5位、全日本8区4位/関東IC5千6位
3年:箱根10区2位、全日本3区2位、出雲2区1位/日本IC1万m9位、関東IC1万4位
4年:箱根3区4位、全日本4区7位、出雲補欠/日本IC1万m13位、関東IC5千14位1万17位
進路:SGHグループ
4年間通して活躍があったのは、鈴木選手という事になりますね。中学時代は野球部ながら、高校1年生で都道府県対抗駅伝で高校生エース区間5区8位の成績を残しています。やはり、相当なポテンシャルがあったのだなと思います。
高校3年時に再び上がってきて、IHでは決勝で転倒の悔しさを味わいますが、国体や全国駅伝各大会で安定した成績を残します。5000m14分12秒の持ちタイム以上に、主要大会での安定の高さが際立っていました。
大学入学した直後の関東インカレで、一気に鈴木選手の名前が全国区になります。出走メンバーに選ばれた5000mでいきなり3位表彰台。2部とは言え、長距離は駒大他留学生の選手もいて、有力選手ぞろい。かなりのインパクトを残しました。
チームとして3冠をかけた大学駅伝シーズン、出雲駅伝で大事な1区を任されて区間5位と役割を果たし、ルーキーらしからぬ働きをします。その後の11月世田谷ハーフでチームトップ、そして1万m28分31秒のベストを出して、一気に全国区となります。ただ、その後故障気味となり箱根は逃します。
2年3年と関東インカレに出場し、毎年しっかり入賞。少し怪我もありましたが、2年全日本駅伝はアンカー、ついに登場となった箱根は再度1区。3年時の出雲駅伝は2区区間賞、どの区間でも対応できるのが鈴木選手の良さ
ですね。記録も伸び、3年丸亀ハーフで61分45秒のベストを出します。
ただ、4年生は苦しんだのですよね。大会には出場するものの、結果が出ない日々が続きました。駅伝シーズンは、出雲駅伝は補欠に甘んじる屈辱も味わいました。
それでも鈴木選手は強かった。全日本駅伝で復調のきっかけをつかむと、そこから調子が急上昇。箱根は往路3区で起用され、大きく流れを作りました。進路先は中堅どころのSGHグループ、即戦力ですし一つ上の先輩もいます。チームを引き上げていきたいところです。
吉田祐也14分02秒18/28分42秒58/63分19秒/2時間8分30秒
高3:14分26秒75
1年:出雲補欠
2年:箱根補欠、
3年:箱根補欠、全日本5区1位/日本IC1万m3位、関東IChalf16位
4年:箱根4区1位、全日本5区3位/関東IChalf4位
進路:ブルボン(引退??)
さて、サクセスストーリー現在進行中なのが吉田選手になりますね。高校時代突出した成績がない中、青学大の分厚い選手層の中で、出雲駅伝の10人のメンバーに選ばれます。
その後はしばらく駅伝メンバーから遠ざかっていましたが、2年時の箱根で再びメンバー入り、出走目前の11番手まで力を伸ばします。そして3年生夏を超えて一気に結果が出始めます。
日本インカレ1万mで驚きの入賞を果たすと、全日本駅伝で悲願の大学駅伝初出走。5区区間賞の上々のデビュー。総合優勝を手繰り寄せる走りをします。
しかしです。ここから不調に陥ったわけではないのに、箱根駅伝は11人目ということでメンバーから外されます。その理由も納得がいかなかった吉田選手。原監督「腐ってもおかしくはない」ところ、練習に悔しさを爆発させます。
元々質量が高い青学大の中で、一番の練習量を誇っていた吉田選手。秋になって、大幅に走力を上げてきます。1万m28分42秒のベストを出して、いざ最初で最後の箱根駅伝は準エース区間の4区。
見るからに非常にストライドの広い走りで、どんどん前に進んでいく走り。現役引退レースが、本人も予想していなかった区間新記録。記録的に非常にレベルの高いタイムに、原監督・瀬古リーダーまで現役続行を直訴。
思い出レースとしてエントリーしていた別府大分毎日マラソンがまさかの試験レースに。箱根より調子が良かったという吉田選手、最終盤まで優勝争いに加わって、日本人トップの3位!タイムも2時間8分30秒は、初マラソン歴代2位、日本人学生歴代2位、青学大関係者歴代1位のタイム…
プロランナーになることに、真面目な吉田選手は真剣に考えているところ、彼の決断を見守りたいですね。
中村友哉13分56秒81/28分31秒68/63分08秒
高3:5千13分56秒81、全国4区22位、IH1500m6位
1年:関東IC1500m5位
2年:
3年:
4年:箱根7区4位、全日本6区2位、出雲6区5位/関東IC5千16位
進路:大阪ガス
高校時代の5000mの自己ベストが一番良かったのは中村選手なのですよね。IH1500mで上位に入るスピードランナーです。また、2つ上の兄貴も青学大で箱根を走っていたことも話題になりました。
デビューは関東インカレ1500mで入賞し、まずまず。1万mでも29分台はマークして、少しずつ走力を上げていきます。ただ、そこから長い間故障に苦しむことになりますね…。試合にもなかなか出れませんでした。
3年生になったころには、原監督にマネージャーをすすめられたこともあったとか…。何とか時間をもらい、3年の冬前に試合復帰すると、少しずつ結果が出始めます。
4年になって関東インカレ5千出走、学生個人選手権で好走すると、一気に上昇気流に乗り、三大駅伝デビューを果たします。出雲駅伝はいきなりアンカー。優勝争いから脱落する形でゴールをすると、原監督から「駅伝力0点」と酷評を受けます。
次がないと必死になった全日本駅伝は6区3位の好走で4人抜き、その後記録会でも1万m大幅ベスト28分31秒の学内トップをマーク。箱根駅伝7区を勝ち取ると、しっかりとトップを保持しました。乗ってきたところ、大阪ガスでさらに飛躍したいですね。
生方敦也13分59秒61/29分08秒39/64分51秒
高3:5千14分18秒27、高4区25位、IH1500m7位
1年:
2年:関東IC1500m4位
3年:箱根補欠、全日本補欠、出雲5区2位/日本IC1500m、関東IC1500m1位
4年:全日本補欠、出雲補欠/関東IC1500m4位
進路:SUBARU
生方選手も高校の頃からスピード抜群のランナー。1500m7位は、先述の中村選手の次にゴールしています。
大学で頭角を現したのは、2年生の頃から。関東インカレで4位入賞しています。まずは得意分野でしっかりと青学大陸上部に貢献します。
3年生になって磨きがかかり、1500m2部優勝で一気に全国区に。スピードを武器に、出雲駅伝の出場権を勝ち取り、5区を走り優勝に貢献します。距離が長くなった全日本・箱根は補欠でしたが、エントリーに入ります。また、自己ベストもこの年にマークしますね。
4年目も関東インカレで入賞。3年連続ですね、出雲・全日本はメンバーに入りますが補欠。11月以降調子を落としてしまい、箱根駅伝は出走なりませんでした。スピードはまだまだこれからと思いますので、SUBARUで磨きがかかればと思います。
谷野航平14分05秒96/29分36秒71/64分16秒
高3:15分13秒
1年:
2年:
3年:
4年:箱根6区3位/日本IC1500m4位、関東IC1500m2位
比較的高校生のスカウトが良い青学大ですが、谷野選手は5000m15分台でした。他の選手より1分ほど遅いベストでした。
大変なこともあったと思いますが、それでも長い距離を地道に強化し続け、3年までには1万29分36秒・ハーフ64分16秒と駅伝メンバーに狙えるところまで成長してきます。
4年目、1500mでインカレ挑戦はちょっとびっくり。関東インカレは日本人トップの2位!さらに日本インカレでも4位と大健闘します。
その後、全く試合に出なくなった中、箱根駅伝にいきなりエントリー!やはり6区山下りに向けての準備でした。下りと平地に、1500mの経験が大いに生かされ、見事な好走でした。青学大の層で、総合優勝のメンバーに入れたのは凄いと思います!
中根滉稀14分14秒10/29分58秒83/65分43秒
高3:5千14分14秒
1年:
2年:箱根補欠
3年:
4年:
その谷野選手と6区山下りを争っていたのが中根選手なんですよね。2年生の時も、いきなり箱根メンバーに選ばれ驚いたのですが、この時もそうだったのでしょうか?
4年秋になって本格的に争い、原監督も悩んだそうです。ただ、11月記録会、中根選手が転倒してしまいます。それが因果となったのか、12月10日エントリーに名前はありませんでした。
その後、年内の記録会に出て1万m29分58秒の自己ベスト。中根選手ができることをして、チームを盛り立てています。
※竹石尚人選手は、現役引退する予定でしたが、留年して、実業団入りを狙うそうなので割愛しています。